今昔とんでも物語【60】僧と菩薩


平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回も前回同様、女に弱い僧のお話です。
鼻先人参の美女に釣られて猛勉強‼(17巻33話)
雑なストーリー①・昔、地方の山で僧の修行をしている青年がおりました。勉強をしたい気持ちが無い訳ではないのですが、いまいち真面目になれませんでした。それでも学業成就の祈願に、近くはないお寺によく詣でていました。そのお寺を詣でた帰り道、知り合いと話してたりして予定外に時間が経ってしまい、途中ですっかり日が暮れて暗くなってしまいました。どこかに泊めてもらおうと歩いていると、妙に気を引くお洒落な家がありました。
雑なストーリー②・「旅の僧なんですが今夜泊めて頂けませんかぁ」と家の者に言うと、主は今留守ですが泊めてくれるでしょうとの事でした。中に入れてもらいますと増々素敵な屋敷でした。家の者に食事を運ばれて美味しくいただきました。後から留守してた主の女性が戻り、屋敷の奥から記帳越しに挨拶に来ました。
夜になり僧がフラッと屋敷の中を歩いていると、戸に穴が開いていたのでそこから覗き込むと、先程の屋敷の主の女のくつろいだ姿が見えました。信じられない程の美人で、僧はたちまち愛欲の炎をたぎらせました。一旦戻って夜が更けてから出直し、いよいよ横になった女の布団の中に入ろうとすると、女が目を覚まし「誰っ?」と聞きました。
雑なストーリー③・「ちょっと!立派なお坊さんと思って泊めてあげたのに何してんのよ。そりゃあ私は去年夫を亡くしてからモテてるけど、つまんない男とは一緒にはなりたくないわけよ。貴方が絶対いやなんじゃないけど、せめて、尊いお経を暗記してから出直してくんない?」と言われます。僧は「そうか…」と思い直してとっとと山に戻り猛勉強します。屋敷の女主から「頑張って!」と差し入れが届きますので、張り切って勉強します。お経もすぐに暗記して何も見ないでも読めるようになりました。
雑なストーリー④・「よっしゃー!」と僧はいつものお寺詣でに行った後、この前の屋敷に行き、お経を読んで聞かせました。夜、また女の元にこっそり忍んで行くと女は身を許さず言いました。「お経1つ読めただけじゃね…本当に私が好きなら3年くらい山に籠って勉強して。立派な僧の妻にしか私はならないわよ」と。僧はまたもや「ごもっとも」と思い何もせず自分のお寺に帰りました。それから、僧はバリバリ勉強してそのうち「この世代の僧の中では一番優秀なんじゃ」と言われるまでになりました。女からは応援の手紙や品物がずっと届いたのでそれも励みになりました。
雑なストーリー⑤・そして約束の3年が経ち僧は、いよいよ参詣帰りに例の屋敷に行きました。すると女は「聞きたい事がある」と仏教について聞いてきましたが僧はよく勉強してたので答えられます。「こんなに詳しい人なら一緒に精進できそう♥」と僧は嬉しく感じます。そしていよいよ女の布団の中に入れて貰えたのですが女に「どうぞこのまま…しばらく」と言われ、そのうち旅の疲れで眠ってしまいます。
雑なストーリー・⑥・そして目が覚めると、なんと僧は野原の中に寝ていたのです。寒いわ怖いわで思考停止しますが、いつも詣でていた寺に近い野原だと気が付き、寺に行き泊めてもらいました。すると夢の中に美しい小僧さんが現れ言いました。「今日起きた事は私の仕組んだ事、狐とかのいたずらじゃないから。お前は女好き過ぎて真面目に勉強しないから、私が女に化けて勉強させたの。これからも頑張んなさい」と言いました。
夢に出て来た小僧さんはいつも詣でていたお寺の菩薩の化身だったのです。僧は目覚めて、おのれの下心が恥ずかしく、反省しました。そして増々精進して立派な僧になったそうです。
野式部の雑な感想
誰にとっても己の性と向き合う事は困難でしょうが、その欲望を目当てに勉強させるとは凄いです。アメフト部の学生に「勝ったらキスしてあげる♥」と言うのと何が違うのでしょうか。しかし今回のお話の僧、散々焦らされてハードル上げられても頑張り抜いて「やった!」と思ったら夢オチかーい、とズッコケず「もっと頑張ろ」と気持ちの切り替えが出来るとは、やっぱり立派です。前回同様、優れた資質を見込まれての事なのでしょうが「こ、こんな方法でいいの?」とちょっと思っちゃうのが今昔物語の魅力なのです。

次回は「今昔とんでも物語【61】」を、お送りします。次回も女に弱い僧のお話です。どれだけいるのよ。
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