今昔とんでも物語【63】前世とお経・中編

平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、前世にまつわる話を3つ、ご紹介いたします。

それぞれの僕らの前世物語

その①・魚から人間に

昔、あるお寺で努力してもどうしてもお経の三行が覚えられない僧がいました。なんとか覚えられるように神仏にお願いしますと、夢の中に尊い風情の見知らぬ老僧が現れ言いました。

「君は前世で魚だった。人に捕らえられた時、お経に包まれて三行を食べてしまったからどうしても覚えられないんだ。でもお経に包まれた事で人間に転生できたんだよ」

僧は驚きましたが前世を知る事で心の平穏を得て精進しお経もコンプリート出来ました。

その②・黒い牛から人間に

昔、あるお寺で努力してもどうしてもお経を覚えられない巻がある僧がいました。なんとか覚えられるように神仏にお願いしますと、夢の中に尊い風情の見知らぬ僧が現れ言いました。

「君は前世で黒い牛だった。飼い主が寺に来た時、連れて来ていたから人間に転生で来たんだよ。でも飼い主が用事を済ませて君を連れて帰って、全部聞いていないからどうしても覚えられない箇所があるんだよ」

僧は驚きましたが前世を知る事で心の平穏を得て精進しお経もコンプリート出来ました。

その③・コオロギから人間に

昔、あるお寺で努力してもどうしてもお経のある巻が覚えられない僧がいました。なんとか覚えられるように神仏にお願いしますと、夢の中に菩薩の姿の人が現れ言いました。

「君は前世でコオロギだった。お寺に居て僧のお経を聞いていたから人間に転生で来たんだ。でもお経を唱えていた僧が途中で湯あみをして戻ってきた時に、壁にもたれてコオロギを潰してしまったから君は死んでしまった。だから聞いてないお経の部分をどうしても覚えられないんだよ」

僧は驚きましたが前世を知る事で心の平穏を得て精進しお経もコンプリート出来ました。

野式部の雑な感想

人間以外の生物を下に考えるのはどうだろうと、綺麗事でも思っていましたが、「あっ、こんなに簡単に人間になれるんだ」とちょっと安堵しました。

動物はもとより、昆虫まで人間に転生できるとは。しかもその生き物の意思に無関係にお経に関わっただけで僧になれるのです。ここはお経に関するプロパガンダのストーリー?とは思わずに素直に凄いなぁ、と思いたいです。

ところで、イラストのコオロギを「おじゃる丸」の電ボ級に肥大して描いてしまった事、お詫びいたします。

次回は「今昔とんでも物語【64】」前世とお経後編を、お送りします。次回も色んなものが人間になります。


この記事が少しでも面白い!と思っていただけたら、
応援のクリックをいただけたら嬉しいです!