今昔とんでも物語【66】パパはCOW


安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、縁の不思議を感じるお話です。
涙の「俺みたいになるな!」(14巻37話)
雑なストーリー①・昔ある地方都市に住む者が「お坊さんを集めていいお経を読んでもらって前世の罪を懺悔しよう!」と思い立ちました。その家の者がお坊さんにあちこち声を掛けており、たまたま道を歩いてた僧にも声が掛かりました。
雑なストーリー②・道を歩いてた僧も家に上がりお経を唱えました。その夜は皆その家に泊めまることになりました。すると僧はその家が用意した布団が気に入ってしまいました。「明日はお経のお礼を貰えるけど、それよりも今この布団を盗んで逃げた方がコスパがいいな」夜も更けいよいよ僧が布団を盗んで逃げようとした時「布団盗むのやめなー」と言う声がしました。しかし見渡しても誰もいません。声のした方を見ても外に牛が飼われているだけでした。僧は怖くなって泥棒をやめて眠る事にしました。
雑なストーリー③・僧は夢を見ました。その中で牛の方に近づくと、牛は人の言葉で話し出します。「自分はこの家の主の父親だったけど、黙って息子の稲を10束盗んでしまった。その罪で牛に生まれ変わったんだよ。それくらい盗みは悪い事だからやめなー。この話が信じられないなら、明日この夢を家主に話して座席を作ってもらえ。そして『もしお前が自分の父親ならこの席に座れ』と牛に向かって言ってもらえ。牛は座るはずだ。そうすればこの話が本当だとわかるだろう」
雑なストーリー④・僧は目が覚めると、家主に夢の中で牛が言った事を伝えました。家主は驚きながらも言う通りに座席を用意して牛に話しかけました。
すると牛はその座席に座ったのです。家主は泣き崩れ、父親の生まれ変わりを家畜として飼ってしまった不孝に許しを請いました。そして父が稲を盗んだ前世を許しました。その日の内に牛は涙を流して死にました。家主は改めて父親を弔いました。
雑なストーリー⑤・僧は家主からあの布団とお礼を沢山もらいました。僧は思いました。「昨夜、布団を盗んで逃げてたら俺のこの人生も来世までも、凄い悪いものになったな…」とホッとしました。そしてこの話を人々に伝えました。
野式部の雑な感想
ある世界のニュースなど伝える番組を思い出しました。海外で不良まっしぐらなハイティーンたちを集め刑務所に体験入学?させる内容です。いきがっていた子供達も本物の迫力にもれなく泣き出し更生を誓うのでした。この時の不良の先輩達の胸の内を思うと複雑です。自分を見本にこうなるな、と言うのですから。もし自分達が子供だった時にそう言ってくれる人がいたら今、この場所にいなくて済んだかも、と。でも子供達の為に頑張った先輩達の未来には希望があると信じます。
今回の話も、僧は牛のお陰で罪を未然に防げました。さらに牛も僧を通して息子にとりなしてもらい、成仏出来たのですから、これがウィンウインと言うものでしょうか。
ただへそ曲がり人間としては、お父さんが息子に黙ってまで稲を盗んだのは息子の母親以外の女性にあげるためだったんじゃ…と邪推してしまいます。だって「ちょっと貸してー来年返すからー」って言えば済む話じゃないですか?息子優しそうだし。父としてのプライドがそうさせたのでしょうか。そのために罪を背負い牛になるとは因果よのー。あとお布施より布団が高額なんですね、たぶん。

次回は「今昔とんでも物語【67】」を、お送りします。僧のお話の予定ですがまだ決まってないんです。その前に蜻蛉日記を勝手に漫画にした最終話が描き終わりましたので投稿させて頂く予定でおります。
この記事が少しでも面白い!と思っていただけたら、
応援のクリックをいただけたら嬉しいです!