今昔とんでも物語【67】海の中の僧

ビックリする船人

平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、家族のクライムサスペンスです。

恐怖の計画殺人‼(14巻38話)

雑なストーリー①・昔、奈良の都に一人の僧がいました。この僧には妻子がありましたが、お金を貯めてそれを人に貸した利息で妻子を養っていました。娘が結婚して相手も一緒に暮らしていましたが、ある時、娘の夫が仕事で地方都市に行く事になりました。何かと入り用なので僧は娘婿にお金を貸しました。

雑なストーリー②・一年が経ち、娘婿は借金の元本は返せたのですが利息は払えませんでした。すると義父が「はよきっちり返さんかい」と責めるので困ってしまい「そうだ、お義父さんを殺しちゃおう」と極端な結論に至ります。
そして「お金を置いてある所に一緒に来てくれれば返します」と噓を付き義父と船に乗ります。船の上で船頭と前もって共謀して義父の手足をを縄で縛り、海に投げ捨ててしまいます。

雑なストーリー③・娘婿はしれっと家に帰り「お義父さんが船から海に落ちてしまった…助けようとしたけど駄目だった…」と嘘を付きます。娘は大変嘆き悲しみます。

一方、海では船に乗った人が、水の中に縛られてるけど生きてる僧を見つけ慌てて引き上げます。縛られていたのも不思議ですが水がこの僧を除けていたのがもっと不思議なので僧に尋ねると「私は一つのお経をずっと熱心に信心して唱えてきました。海の中でも唱え続けたのでお経のご利益でしょう」とだけ答え、船人に自分を家まで送って欲しいと頼むのでした。

雑なストーリー④・家では父親の供養の為に娘が法要を行っていました。僧は顔を隠し入り込み、僧たちに紛れました。娘婿は自分が殺したはずの義父の顔を見かけて驚き恐れてそのままどこかに消えて行きました。

僧は娘婿を恨まず誰にも話しませんでした。お経を更に熱心に信心したという事です。

野式部の雑な感想

こういったお金のトラブルは昔からあったのですね。それにしてもこの娘婿は義父の財テクで育ってきた娘と結婚したのに残念な事です。理屈では勿論約束を守れなかった方が悪いのでしょうが、へそ曲がり人間としては義父の取り立てが余りにも厳しかったのかも、なんて思ってしまいます。もしかしたら義理とはいえ親子だからちょっと甘えた気持ちもあったのでしょうか。

そして誰にも言わなかったはずの話を日本中が知っているという昔話不思議あるあるです。戒めの教訓として晩年に人に伝えたのでしょう。

次回は「今昔とんでも物語【68】」を、お送りします。ライバル関係の僧達が熾烈な戦いを繰り広げる話です。


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