今昔とんでも物語【68】敵と栗


平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、僧同士のバトルのお話です。
有名僧の泥沼トラブル(14巻40話)
雑なストーリー①・昔、京に有名な僧が二人いて天皇も相談相手にするほどでした。ある日、天皇に呼ばれた僧、修円が天皇とボーイズトークしてますと横に大きな栗がありました。天皇が配下の者に「これ茹でて持ってきて」と指示すると修円が「よかったら私の法力ですぐ茹でますよ」と言うので「えーそりゃ面白いじゃん。ぜひお願い」と天皇は答えました。修円がなむなむ唱えると、栗はみるみる茹で上がります。食べてみると味も何とも美味なので天皇は喜びました。
雑なストーリー②・天皇は修円に栗を何度も茹でてもらいました。その話を天皇がもう一人の僧、空海に話しました。すると空海は「そりゃ興味深いので彼を呼んで栗を茹でて貰ってください。その時に自分に隠れて見させて下さい」とお願いしました。天皇は承知しました。
雑なストーリー③・修円が栗を茹でにやってきた時、空海は隠れて修円の念じる力を封じ込めました。するとどれほど修円が念じても栗は茹で上がりません。しばらくして空海が姿を現したので修円は栗が茹で上がらなかったのは空海が邪魔をしたからだと察しました。この時から二人の僧は深く憎み合い、ついには相手が死ぬように呪詛をかけ合いました。
雑なストーリー④・同じくらいの能力で呪詛を行ったのでどちらの命も無事でした。そこで空海は一計を案じました。弟子たちに葬式の道具を買い求めに行かせ人に「師匠、空海が亡くなった」と嘘をつかせました。それを聞きつけた修円は「やったーおれの呪詛が効いたんだー」と喜びました。
雑なストーリー⑤・空海は修円が呪詛を取りやめたのを確認してからいっきに呪詛をかけました。すると修円はたちまち死んでしまいました。
優しさで有名な空海がここまでしたのは、生かして置いたら修円が酷い悪事を働くことが分かっていたから、と言われています。
野式部の雑な感想
このお話だけ見ますと正直立派な僧同士が大人げない…と思ってしまいます。元を正せば茹で栗が原因なのです。僧といえども、天皇の存在は大きいものなのでしょうけど。呪い合うのも凄いですが埒が明かないのにしびれを切らし嘘まで付いて相手の呪詛を止めさせ殺すとは…僧の人間味溢れる姿は、ギリシャ神話のように興味深く味がある、と思います。今回、弘法大師を空海という名前にさせて頂きました。

次回は「今昔とんでも物語【69】」を、お送りします。ロック、ではないけれど僧のこじれた友情のお話です。
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