今昔とんでも物語【69】僧の友情


平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、価値観のひっくり返るお話です。
アリとキリギリス、逆ギレのアリ(15巻1話)
雑なストーリー①・昔、あるお寺に二人の僧がおりました。一人は大変勉強熱心な僧で、もう一人は真面目に修行しない眠ってばかりいる僧でした。二人は正反対ながら長年の友人でした。
雑なストーリー②・ある時、不真面目な僧が病死しました。真面目な僧は「あんなにだらけた男が死後、どんな場所に行ったのか心配だなぁ、知りたいなぁ」と何か月も願い続けました。
雑なストーリー③・ある夜、真面目僧の夢に不真面目僧が現れました。しかし不真面目僧がいたのは浄土のような美しい場所でした。不真面目僧は「お前が俺の死後をめっちゃ気にしてから見せてあげたけどお前のいる場所ではないからもう、帰んなー」と言いました。真面目僧は「自分は浄土に来るのが願いだったんだから絶対帰んないよ!」と返しました。
雑なストーリー④・すると不真面目僧は「俺は長年、口もきかず、雑念もせずに、ひたすら浄土の姿を思い浮かべながら静かに寝ていたから浄土に来られたの。お前みたいにやみくもに勉強頑張るだけじゃ難しいかもね。じゃあ極楽浄土の事を仏さんに聞きに行こう」と言って御仏のもとに連れていってくれました。
雑なストーリー⑤・真面目僧が仏にどうしたら浄土に行けるかお伺いすると仏は「浄土のイメージートレーニングをするといいよ」とお答えになり、その手のひらに浄土の姿を映し出して見せて下さりました。真面目僧はそこで目が覚めました。
真面目僧は大急ぎで絵師を呼び、浄土の記憶を伝えて絵にしてもらいました。そして常にその絵を見て浄土を思い浮かべていたので、やがて極楽往生できました。その絵は今でもお寺に残っていて皆が大切に拝んでいるそうです。
野式部の雑な感想
とても面白い話です。この真面目な僧は友達の死後が気になる、と言いながらも相手を見下していたから「さぞひどい目にあってんだろーね」と好奇心があったのでしょう。もし本当に大切な友人が思いがけずいい場所に居たら、ひたすら歓ぶはずですが「なっとくいかねー」とごねるとはなかなかの性格をなさってます。それでも、仏に会わせてもらい極楽見せてもらって絵にまでするとは、ちゃっかりしてますよね。
極楽へのアプローチは人知を超えた所にあると申しますか、心の狭いガリ勉君も見放さない仏の懐の深さに感動します。

次回は「今昔とんでも物語【70】」を、お送りします。次回は思いつきで僧になる若者のお話です。
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