今昔とんでも物語【92】逃げた女房に未練あり

追いかけて旅

今回は上司の尻拭いをしてくれた人のお話です。平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中から、特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。

国隆寺の地蔵菩薩像(17巻25話より)

雑なストーリー①・昔、ある所にお寺がありました。そのお寺の責任者の僧が、地蔵尊像を造って欲しい、と仏師達に依頼しました。しかしそんなおり、なんと責任者の僧の妻が男を作り駆け落ちしてしまったのです。責任者の僧は心を乱し、妻を連れ戻そうと失踪してしまいました。仏師達はせっかく寺に着いたのにご飯のお世話をする人がいないのでお腹が減って困ってしまいました。

雑なストーリー②・そのお寺の雑務担当の僧が見かねて仏師達にご飯を提供しました。おかげで地蔵尊像の形は完成しました。これから色を塗る予定でしたが、その僧は病になってしまい亡くなってしまうのでした。

雑なストーリー③・亡くなった僧の妻と子は、僧を棺に入れたものの悲しすぎて置いたままにしていました。数日後、その棺の蓋ががたりと動きました。恐れながらも妻子が蓋を開けると、なんと僧が生き返り「お水ちょうだい」と言ったのです。

雑なストーリー④・水を飲み落ち着いた僧はいきさつを話し出しました。「自分が死んだら冥途で大きな鬼二人に捕まえられて歩いていたんだけど、白い着物を着た貴い感じの僧が現れて、鬼達に『お前たち、この男を許してあげなさい。わたしゃ地蔵菩薩だよ。私の像を造る予定の者がばっくれちゃって代わりにこの者が引き継いでくれたんだから』と仰った。鬼達は跪いてから去っていったよ。今度は地蔵菩薩様は自分に向かって仰ったんだ。『私の像を造ってくれてありがとね。後は色塗って完成させなさいよ』と。それでこの世への帰り道まで教えてくださったんだよ」それを聞いて僧の妻子は涙を流して喜びました。

雑なストーリー⑤・その後、僧は私財を投げうって地蔵尊像を完成させ供養しました。その像は今もお寺に残っています。人々は「仏像を一度造ると決めたら絶対やり遂げなきゃいけないな」と話し合いました。

野式部の雑な感想

この話、好きです。依頼者が消えてしまい困っている仏師達を助けた僧は偉いですが、浮気して逃げた妻を連れ戻そうとなりふり構わず追いかける僧、いいですね。しかも僧ともあろうものが地蔵尊像を造るという尊い役目をおっぽりだして。その人間臭さがいいなぁと思います。間違いなく罰当たりでしょうけど。

次回は「今昔とんでも物語【93】」を、お送りします。僧と尼の夫婦のお話です。


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