野式部の私の好きな古典BEST10⑪

海を見る徳子さん

第2位 「平家物語」後編

個人的に好きな、心に残った古典作品をベストテン形式で発表していこうとゆう呑気なシリーズです。お気軽に読んで頂ければ幸いです。

姫君の中の姫君、平家繁栄のシンボル、その名は徳子!

前回は、「平家物語」の中から「木曾の最期」について語らせて頂きましたが、今回は、平清盛の娘、平徳子の、数奇な人生について語らせて頂きます。

「生きながら六道を見た!」徳子激白!その天国と地獄!

子沢山な清盛でしたが、徳子は、正妻、時子の娘なので、別格でした。皇子、安徳天皇を産み、皇族の外祖父になる清盛の悲願を果たしたのも、徳子でした。輝かしい人生、しかしそのままでは終わらなかったのです。晩年、徳子が「六道を見た…」と語った、その道を雑に紹介させていただきます。

六道とは、仏教の言葉で、生き物それぞれが一生に一道、生きる世界の事です。

その①天上道

大切に育てられた娘、徳子。特に宮中に帝の妃として入内してからは、誰からも敬われ、何の心配も不足もない、天上の世界のようでした。

その②人間道

輝く太陽が陰っていくように、源氏の武将が打倒平家のため立ち上がり、進軍してきたので、都を追われる羽目に。不安があり、敵が現れ、まっ人間が経験する世界ですわね。

その③修羅道

敵に負けたり、巻き返したり、陸に海にと、平家一門は彷徨いました。その間、常に争いがつきまとい、まるで、戦いの神、阿修羅の世界に居るようでした。

その④畜生道

この道だけは、異質です。船の中で兄たちと近親相姦の噂を立てられ、人間以下に貶められた心地がしたそうです。他に、亡くなった平家一門が竜宮城(竜のお城ですって)に住んでますよって夢を見たから、竜は畜生だから、畜生道、みたいなことでした。正直、六道コンプリートのために多少こじつけた感のある畜生道でした。

その⑤餓鬼道

修羅道とリンクして、戦には争いや死の恐怖のほかに、衣食住の不安定があるかと思います。まして平氏は、敵に追われて彷徨ったわけですから、何不自由ない暮らしをしてきた人間にとっては、初めての喉の渇きや空腹は、餓鬼(地獄に住む飢えた鬼)になってしまったかのような苦しみでした。

その⑥地獄道

そして遂に壇ノ浦、もはやこれまでと悟った平氏が、次々と海に入水していく中、平時子は孫の安徳天皇、三種の神器と共に海に消えました。この神器が後から見つからなくて、平家を追い詰めた源義経は、お兄ちゃん頼朝から、めっちゃ怒られますから、さすが清盛の妻、見事復讐しました。しかし徳子にとっては、愛する人たちを失ったその悲しみは、まさに地獄でした。

生き恥、それとも供養?徳子、最後の日々…

壇ノ浦の船上から、遅れじと海に飛び込んだ徳子でしたが、敵に引き上げられ、自害は叶いませんでした。平家繁栄の中心人物でありながら、おめおめと生き延びて、どんくせえ、とゆう見方もあるでしょう。しかし、本当は死にそびれたのではなく、生かされたのではないのでしょうか。平氏を弔うのに最も適した人物として、神仏に選ばれたようにも思えるのです。

徳子は捕虜となり、最後は出家して、京の外れのボロい庵で暮らすことになります。日本の歴史上の人物の中でも、これほど浮き沈みの激しい人生は稀ではないでしょうか。更に辛いのはこの人生が、最上から奈落へと落ちるばかりの人生でした。

平家物語は、徳子の往生で終わります。耐えがたい屈辱と悲しみに耐え、天命を全うする事こそが、平家繁栄の象徴としての贖罪になったのではないでしょうか。徳子は極楽へと旅立ちました。

次回は、いよいよ野式部の私の好きな古典、第1位を発表します。


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