源氏物語・私の好きな女君BEST10②

恩を仇で返した猫と

第9位 女三宮

身分、年齢、容姿、人柄まで、幅広い女性達が登場する源氏物語は、まるで女の百貨店です。その中で僭越ながら「好き」と申しますのは、「なんか気に食わない」みたいな事ではなく、「どのような運命を用意された人であったか」とゆう観点からの、個人的なランキングになっております。

猫と男達に人生を狂わされた?悲劇のヒロイン…

雑な人物紹介・女三宮は、光源氏の異母兄で譲位した院の娘なので、姪に当たる女君です。お兄ちゃんが「出家したいけど、この子の行く末が心配だから、頼むよ~」と弟・光源氏に託したのです。

人生ファイルその1・事件勃発!恩を仇で返す飼い猫!

そんな訳で、光源氏の妻となった、女三宮。高貴な姫君ゆえに、周囲には波紋が広がりますが、本人は父親が心配するほどのおっとり娘なので、吞気に猫を可愛がる日々。しかしここである青年が登場します。光源氏の好敵手の息子、柏木くんです。彼は元々、女三宮に憧れて「結婚したい!」と切望しますが叶いません。女三宮が天下の光源氏の妻となった後も未練で、光源氏の息子と仲良しなのでお屋敷に遊びに行き、「あそこがあの方のお部屋かなぁ」とそわそわしてた時、事件は起きました。女三宮の飼い猫の首紐が引っかかって、御簾がまくれ上がり、部屋の中が丸見えになっちゃったのです。

人生ファイルその2・侍女の裏切りで夫以外の子供を妊娠!

そもそもガードの緩い女三宮のお姿を、ばっちり見ちゃった柏木は、ますます恋焦がれます。それから何年も経った後ですが、手を尽くして女三宮の部屋に忍び込み、一方的に想いを遂げます。

被害者ながら、夫を裏切ってしまった女三宮は、恐怖で動揺するばかり。ある時、夫が急に訪れたので、とっさに柏木からのお手紙を隠したまでは良かったけど、そのこと忘れちゃうとゆう、痛恨のミスを犯してしまいます。光源氏は手紙を発見して、女三宮と柏木の不適切な関係を知るのでした。

人生ファイルその3・出産、そして父親も驚く強情で出家!

やがて女三宮は、男の子を無事出産します。しかし、光源氏は、自分は散々人の妻盗んだりしてきたくせに自分がされると激昂、猫の額より狭い心で、女三宮と柏木に辛く当たるのです。女三宮は、自分に対する愛情はさほど感じないのに、嫉妬だけは一丁前の夫に嫌気が差し、お見舞いに訪ねてきた父親に、「もーあたし出家する!なにがなんでも!」と言い張ります。おっとり娘のあまりの必死な様子に何かを察したパパは「オッケーYOU出家しちゃいなよ」と娘の意思を尊重するのでした。

源氏物語の中でも、最も身分の高い姫君、女三宮。それでも紫式部は「身分高くても優れていない人もいる」と言う訳ではないのです。おっとりした姫君も世間に揉まれ、様々な経験を経て、強い女性に生まれ変わります。その着地点が出家とは悲しい気もしますが、最高の女性である紫の上が、遂に叶えられなかった「出家する夢」を、女三宮が叶えたのは、何とも皮肉な事です。

でも、女三宮は、言葉通り「命懸け」で自分を愛した柏木を、どう思っていたのでしょうか。ただただ迷惑だったのか、それとも多少なりとも憎からず思うようになっていたのでしょうか。

次回は、「好きな女君、第8位」をお送りします。


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