今昔とんでも物語⑯「人妻をさらった男」

起きたらびっくり!

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、現代ではコンプライアンス違反となる驚きの物語です。

誘拐?それともトゥルーラブ?妻は引き出物!

雑なストーリー①・昔ある所に美男子で色好み、しかも仕事も出来て帝にも信頼されてるハイスペック貴族の男がおりました。その男の伯父に当たる大臣、大納言は、年齢は70歳くらいですが、その妻の年齢はな、な、なんと20歳くらい。男は、伯父の妻であるその女性が気になって、ある時、色好みの道の先輩に「あそこの奥さん、どんな感じ?」とさぐりをいれます。すると先輩は「んーあの人は美人だしセンスもいいよ!それに年上すぎる夫に添っている事が不満みたいよ」と答えたので、男はますます興味をそそられるのでした。

雑なストーリー②・そして男は満を持して、伯父さん大納言の屋敷に、新年のご挨拶に伺います。伯父は今時の、これから出世街道まっしぐらの若い甥が訪ねて来てくれたので、酒宴を開き歓待するのでした。

雑なストーリー③・一方、大納言の妻は、御簾の奥から「やっぱ、若い男はいいね~声も匂いもいいわ~それにひきかえわが夫は、並ぶとおじいちゃんじゃん!」と複雑な思いで、男を眺めておりました。それでも自分の方をチラチラ見てる気がするけど、そうだとしてもどう思われてんだか、と恥ずかしくなってきます。

そして宴もたけなわ、みんないい感じで酔っ払いました。伯父さん大納言は色々甥っ子にお土産を持たせますが、男は「せっかく来たんだから―お宅で一番良い物、頂戴よー」とねだります。

雑なストーリー④・すると泥酔した伯父さん大納言は「じゃあ、これしかないでしょ!わが妻以上の宝はこの屋敷には無いから!」と妻を御簾の奥から引っ張り出します。甥っ子も「これよーこれこれー!んじゃあ、有難く頂戴して帰ります。バイビー」と、伯父の妻を素早く自分の車に乗せ、連れ帰るのでした。伯父さん大納言は酔いが冷めてから「なんちゅーことを!」と青ざめますが後の祭り、妻は帰りませんでした。妻にとっては色男の元に行ったのだから良かったのだろうけど、自分は寂しいじゃーん、と悲しんだり悔しがったり嫉妬したり妻を恋しがったりしました。

野式部の雑な感想

これは事件です。しかし再三、大納言の妻は、夫が年上過ぎることの不満をもらしておりますので、事件性は無いのでしょう。別に当人たちが良ければ、年の差は関係ないのですが。ただ、思うんです。こんな風に連れて来た女を、この男は生涯大切に出来るのでしょうか。まっ、どんな夫婦になるかは、当人同士によりますので、幸せを願うばかりです。

次回は「今昔とんでも物語⑰」をお送りします。悲しい別れ方をした夫婦のお話しです。


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