今昔とんでも物語⑱「大江山で縛られた男」
平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、世界的な監督が映画にしたことでも有名なお話です。映画の方はかなり複雑で、それぞれの立場から人間とゆうものを描いた名作となっております。
残念な夫のせいで妻に大災害‼
雑なストーリー①・ある男が妻と、妻の実家に帰る旅の途中で、旅装束の青年と出会います。旅は道連れ、と山道を一緒に進みますが、青年は、立派な太刀を携えていました。青年が自分の太刀を「これは名刀なんです」と、自慢したので、男は羨ましくなりました。すると青年は「この太刀とあなたが担いでいる弓と交換しませんか?」と持ち掛けるのでした。
雑なストーリー②・男は内心大喜び。相手の立派な太刀と自分のボロい弓では、価値の差は明らか。これを交換したら、ちょーお得じゃん!とソロバン勘定して、喜んで交換したのでした。しかし、道を進むうちに青年は「弓だけ持ってても、のびたラーメンみたいに間抜けだから、やっぱ弓矢も2、3本持たせてよ」と言って来ました。男は得してホクホクしてたし、「そりゃそうだよねー。んじゃあ、どうぞ」と、自分がケースに入れて背負っていた弓矢を渡します。
雑なストーリー③・男は適当な場所でお昼にしようとしますが、人が通ったら見苦しいから、とゆう青年の言葉で、全員でどんどん山奥に入って行きます。良い場所が見つかり、ここで休もうと男が妻を馬から降ろしていると、何と青年は弓矢で男を狙い、脅します。男は青年に、木に縛りつけられてしまうのでした。さらに青年は男の妻に襲い掛かり、妻も抗う術もなく、夫の目の前で乱暴されてしまうのでした。
雑なストーリー④・青年は気が済むと「アンタに免じて、だんなの命は奪わないでおくよ。馬は逃げるために貰っていくけどな。良かったぜ、じゃーな」と男の妻に言い残して逃げて行きました。
妻は服を着て、夫の縄を解いて言いました。「まったく、山の中で会ったばかりの男に弓矢と弓渡しちゃうなんて、どんだけアホなのよ!アンタといてもこの先良い事なんてないね!」。男は放心状態のまま、妻の乗った馬を引き、トボトボと歩きだしました。
野式部の雑な感想
こうゆう時、男が悪いんだから、乱暴するならせめて本人にしてよ…と思ってしまいます。セクシャリティーの問題もあるから無理なんですが。結局、女は男の所有物、だから所有者に勝てば好きにしていい、とゆう当時の価値観に基づいているのでしょう。戦争の時もそうです。勝った国の男は負けた国の女に乱暴するのです。あってはならない事です。
この話の唯一の救いは、被害者である妻が気丈に振舞ったところでしょうか。今昔物語には、強い女性が多いのです。
恐怖のワンポイント・アドバイス
「今昔物語」の各話のラストに、語り手の一言があります。時には現代の価値観では許容出来ないような一言もあるのですが、今回は特別に酷いです。「女の着物を盗まなかった若い男は立派だ」って本気ですか?人権蹂躙された後ですよ?着物を盗んで売る風習はあったのでしょうが。この語り手、「妻が目の前で乱暴されていた時の、夫の胸中はどんなものだったか」って文章が途中にあるのですが、完全に男目線ですね。被害者より傍観者を先に心配するとは、物を語る資格があるのかと思います。
次回は「今昔とんでも物語⑲」をお送りします。運命的な一夜を過ごした男女のお話しです。
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