今昔とんでも物語⑧


平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、似たような話だけど実は色々違う、とゆう二つの話です。妻の方から夫に見切りをつけて出て行き、他の男と再婚しますが、元夫との皮肉な再会が待っていたのです。
夫を捨てた妻たち、それぞれの旅立ち!そして再会!
夫を捨てた妻その①・むかしある女が悩んでいました。「なんかうちの旦那イマイチよね。このままでいいのかなぁ」。そんな折「俺だったらアンタにそんな思いさせないよ、俺のトコ来なよ!」と誘う男がありましたので、えいやっ!と夫の元を去ります。
しかし、数年後、新しい夫の上司として屋敷に来たのは、前の夫だったのです。「やっばぁ。絶対会いたくないし」と思いましたが、事情を知る元夫は、酌をするよう強要します。仕方なく出て行くと元夫は「お前、何か年取ったねー、そんなみすぼらしい服着ちゃってさー。ほらこの着物やるよ!」と、着ていた上着を投げつけるのでした。
夫を捨てた妻その②・その①と同じような感じで再婚した女の元に、やっぱり元夫が上司としてやって来ます。元夫はこの部下の妻が自分の元妻と知っていて、酌をしなければ飲まないと言い出します。仕方なく出て行きますと元夫は、お酒を飲みながら料理に添えてあった橘を見て「この花の香りを嗅ぐと、この花が好きだった、昔愛した女性(元妻)を思い出すんだよね~」と、しみじみ歌を詠むのでした。いたたまれなくなった女はその場から走り去り、出家したそうです。
野式部の雑な感想
同じような話なのに、ちょっとずつ違うんですよね。より良い人生を求めて決断したのに、気が付くと前の夫より低い身分の男と暮らす事になる現実。もちちん、身分を求めての決断ではないのでしょうが。
私が思うに、その①の夫は酷いけど、捨てられた恨みや未練を感じます。それに女の方も「あーやっぱ嫌な奴、私の選択、間違えてなかった」と、思える気がします。
結婚に限らず、人生には様々な選択がありますが、その選択が正しかったか、間違っていたか、判定を下す時は人それぞれですし、一生答えは出ないのかも知れません。しかし、その②の女は、思いがけない元夫との再会で、自分が愛していたのは元夫で、その人を捨てた、自分の選択が、間違いだったと気付いてしまった、そのやるせなさにいたたまれなかったのではないか、と思います。でもこの元夫は、悪気はないのでしょうか、ちょっと罪作りですかね。一緒に居た時に感じられなかった愛情を、後から「やっぱり愛情ありました」と言ってくるのは。一夫多妻制の当時、夫が妻を捨てる話はいくらでもあっても、妻が夫を捨てるには大変な勇気が必要だったのでは、と思うのですが。

次回は「今昔とんでも物語⑨」をお送りします。不思議な経緯で子供を授かった娘のお話です。
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