今昔とんでも物語【83】悪法師のナンパ


今回は、隠れた夫の前で口説かれる妻のお話です。平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中から、特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。
従鎮西上人が難を逃れた話(16巻20話より)
雑なストーリー①・昔ある所に美男美女の夫婦がありました。京で任官するのが夫の夢だったので、妻と家の者を伴って上京の旅を始めました。その旅の途中の事です。馬に乗った筋骨逞しい法師が現れて「是非是非、家に泊まって下さい!」と礼儀正しいけど執拗に言うので、夫婦は根負けして泊めてもらう事にしました。
雑なストーリー②・屋敷に着きますと、何から何までいかついので夫婦は怯えながらも眠りに付きます。すると夜中に法師の手下の者達が夫婦の家の者達を殺してしまいます。屋敷の脇に穴を掘り竹の杭を立てて、その中にどんどん放り投げるのです。夫も投げ込まれましたが、すんでの所で身をかわし床下に潜み屋敷の様子をうかがっていました。
雑なストーリー③・すると屋敷の中で、法師が男の妻を口説きにきました。妻は「宿願のため精進してきたからもう数日待ってもらえます?夫がいなくなってあなたしか頼る人はいないんですから嫌だって言うんじゃないんですよ?」と遠回しに断ります。しかし監禁も同様の状況で心細い事限りありません。その後も何度も法師は口説きに来ました。そのうちに妻は床下に夫が潜んでいることに気が付きます。
雑なストーリー④・ある夜、夫が床から這いあがり妻の前に現れます。妻は隠していた太刀を夫に渡します。夫は酔いつぶれている法師を殺します。法師の手下たちは主が死んだとわかると大人しくなったので許してあげます。京に着きこの出来事を報告すると、偉い人に感心され夫は仕官できることになり不自由なく暮らせました。また、どれだけ経っても、法師の縁者だと文句を言ってくる人もいませんでした。
殺人は悪い事ですが、悪人を殺す事は未来の被害者を減らす事になる訳なので、「菩薩の行いだね」と人々は言いました。
野式部の雑な感想
この法師は僧の身なりをしただけの悪人だったのでしょうか。それにしても、死後を弔うと名乗り出る縁者もいないとは当然かもですが寂しいものがあります。
この話の妻で思い出す話があります。ギリシャ神話の英雄オデッセウスの妻は、夫の不在中に求婚して来る男達を断るため「今、織ってる布が完成したら再婚しまーす」と宣言して昼間は機織り機で布を織り、夜中にこっそり昼間織った糸をほどくのでした。目ざとい求婚者がいたら「この女、織物全然進んでねぇ。タイパ悪いな…」と思った事でしょう。夫を待つこの時間が妻にとって価値があると良いのですが。夫はあちこちで浮気してるのに。妻の貞操は夫の財産、という価値観なのでしょうか。

次回は「今昔とんでも物語【84】」を、お送りします。次回も素敵な妻が頑張るお話です。
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