今昔とんでも物語⑮「昔からの妻の元に戻った男」
平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は愛を蘇らせる夫婦のお話です。
団子より花、食い気より趣!夫婦の世界
雑なストーリー①・ある貴族の男が、自分の任地を供の者達とぷらり旅していました。通りかかった海辺で、蛤に海草が自生しているとゆう、珍しい物を発見します。興味深いので妻に届けるようにと、召使の少年に申し付けます。しかしその少年は、男の考えていた方とは違う妻に、お土産を届けてしまうのです。そう、男には二人の妻がいたのでした。
雑なストーリー②・届けられた妻は不思議に思います。「夫とは長年連れ添ってきたけど、近頃は新しい若い妻の方に行ったきりなのに。贈り物をくれるなんて」。たぶん、召使の少年が間違えて持ってきちゃったんだろう、とは思ったけど、折角なので受け取り、毎日眺めては楽しむのでした。
雑なストーリー③・男が京に戻り、新しい妻に「贈り物、どうした?気に入ってくれたかい?」と尋ねると、新しい妻はきょとん顔。どんなものか説明すると「ちょーヤバいんだけど。蛤は焼いて、海草は酢で和えて、これで決まりっしょ!どこやったのよ、早くちょーだいよ!」と怒り出します。男は、召使の少年が、持って行き先を間違えたと気付き「このバカタレが!回収してこい!」と命じるのでした。
雑なストーリー④・お渡ししたものを、間違えたから返せなんて言いづらいなぁ、と少年は困りましたが、昔からの妻は間違えられてたと予想してたので、品物を和歌を書いた紙に包んで、少年に渡すのでした。
雑なストーリー⑤・男は、昔からの妻が、贈り物を大切にしてくれていた事に驚きます。包み紙に書いてあった和歌を読むと、上手い事言葉が掛けてありながらも、怒るでもなく返してくれたのがわかります。男はこの妻の優しい心根と風流を愛する心を、改めて思い出します。それに引き換え、新しい妻は、趣のある品の話をしても食べる事しか考えないのか、とガッカリします。男は、昔からの妻の元に戻るのでした。
野式部の雑な感想
男がどんどん妻を持っていいこの時代、忘れ去られてしまう妻は少なくはありませんでした。そんな中、若く可愛い妻よりも、フレッシュ感の薄れた妻に心を戻す夫の話は、まるで美談であり、教訓的とすら言えます。しかしです、これは単に相性の問題ではないでしょうか。この品物をまず「うまそー」と夫婦で思ったら、それは気の合う良い組み合わせで、楽しい時間を過ごせるのではないでしょうか。色々違うから楽しい関係もあるでしょうが。この話に関しては「無理してギャルと付き合ったけど、チーズタッカルビより、やっぱ刺身だよなぁ」みたいな話でしょうか。
次回は「今昔とんでも物語⑯」をお送りします。伯父さんの妻を貰って帰る男のお話しです。
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