今昔とんでも物語【52】大納言の霊

霊の自己主張

平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、不思議な霊のお話です。

恐くない霊からの伝言(27巻11話)

雑なストーリー①・昔、日本国中で咳の病気が蔓延していた時期の事でした。真夜中に料理の仕事をしている男が、家に帰ろうと職場の門を出ると、なんか高貴な身なりの男性が歩いて来ました。料理人がとりあえず頭を下げると、高貴な身なりの男が話しかけてきました。

雑なストーリー②・「自分は昔からこの国で大納言をしていた者だよ。朝廷でうっかり大罪を犯してしまい流刑になり、その地で死んで疫病神になったんだけど、国には良くしてもらってたから。本当は疫病でみんな死んじゃうはずだったけど、自分の取り成しで咳の病気に抑えてもらったから。それを君に伝えたいと思って」

雑なストーリー③・そう言って元大納言と名乗る男は消えて行きました。料理人はびっくりして怖くなりました。家に帰り人々にこの話を伝えました。世の人は「あの大納言が疫病神になってたんだねー」と驚きました。そして「それにしてもなんでその男(料理人)に伝えたんだろうねー」と話し合ったという事です。

野式部の雑な感想


実は珍しいタイプのお話です。この霊は出てきて話す必要あるでしょうか。しかも当時や政治、人にも無関係な相手です。この「大難を小難で食い止めた」話は信憑性も無ければ確認する術も無いのです。見ようによっては手柄を主張する霊にいまだ残る人間臭さに魅力が感じられる、のかも。

次回は「今昔とんでも物語【53】」を、お送りします。怪奇な同じ人間が2人でてくるお話です。


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