今昔とんでも物語⑭落ちぶれた夫出世した妻

ダジャレの午後

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は残念な元夫婦のお話です。

残酷な再会!貧乏神は俺だった!

雑なストーリー①・昔、貧乏な男がいまして、何をやっても上手く行きません。男には、優しく働き者の妻がいましたが、ある日、男は妻に言います。「俺たち、こんなに一生懸命に働いてるのに、貧乏なままだ。別れた方がお互い上手く行くかもよ?」と。妻は「人生、上手く行かないのは、お互いの前世での悪い行いの報いだから、辛抱して夫婦で頑張りたい」と考えていましたが、仕方なく夫の提案を受け入れ、2人は別れます。

雑なストーリー②・元妻はよく気が付きますので、新しい雇われ先の屋敷で重宝されます。そのうちに屋敷の奥方が病気で亡くなってしまい、いつの間にか、その屋敷の主の後妻になっていました。ある時、新しい夫が国司に任命され、妻と従者、侍女などを大勢引き連れて、任地に向かいます。その道中で車を停めて景色を眺め一休みしていますと、元妻は、目の前で雇われて芦を刈っている男達の中に、別れた夫によく似た男を見掛けます。

雑なストーリー③・まさかと思いつつ、近くに呼び寄せると、元夫に間違いありません。その荒れ果てた様子に元妻の心は痛みます。「なんか、1人だけ風情があるっていうか、なんか趣あるからさー」と苦しい言い訳をしながら、食事など与え、新しい着物に手紙を添えて渡します。

雑なストーリー④・「悪しからじ、と思って別れたのに、こんなとこで芦刈ってるなんて、なんてことよ」。手紙を見て元夫は、牛車に乗っている奥方様が、別れた妻だと気づきます。男は芦刈の作業には戻らず、どこかに去ってしまいました。元妻はこの再会を誰にも話しませんでした。

野式部の雑な感想

辛い話です。この男は、自分の甲斐性なしを顧みず、妻が貧乏神ではないか、と思っていたのです。本当なら「この妻こそが自分の唯一の幸運」と肝に銘じ、相手から「もー別れてよ!」と言われるまでは一緒にいるべきでした。この時代の後ろ盾のない女性が生きていくのがどれほど困難か、枚挙にいとまがないのに、妻は異例の出世を果たします。男は自分の人生がますます上手く行かないので「元妻もきっと苦労してるんだろうな、元気でいてくれればいいけどな」なんて思ってたのに、まさかの再会を果たしてしまうのです。

残酷な現実の前に、男はどこかに去って行きます。絶望して自暴自棄になり、野垂れ死んでしまう可能性もありますが、転機として心を入れ替えて精進して、立派に生きて行った、と思いたいです。

恐怖のワンポイント・アドバイス

「今昔物語」の各話のラストに、語り手の一言があります。時には現代の価値観では許容出来ないような一言もあるのですが、今回は「前世の報いを知らずに、不遇の今を恨んじゃいけないよ」との事です。あと、「この事は、この元妻がだいぶ、年取った頃に人に話して、今に伝わっているらしいよ」とあり、「誰にも言わなかった」はずの話が伝わっている事へのフォローでしょうか。割とあるんです、昔話には。じゃあ誰が伝えたんだ?と思う話が。

次回は「今昔とんでも物語⑮」をお送りします。また、夫婦のお話です。


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