今昔とんでも物語㊹「射られた鬼」
平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、善悪の判断の分かれるお話です。(今昔物語集27巻23話より)
鬼と陰陽師と武士
雑なストーリー①・昔、ある地方の屋敷で人が亡くなりました。死の穢れを払うため、家主が陰陽師を呼びました。すると陰陽師は「〇月〇日に鬼がここに来るから用心して」と言います。陰陽師が「鬼は人の姿でくる」と言うので、家中の者は恐れおののき、厳重な物忌み(身を慎み、外との交流を断つ風習)の準備をしました。
雑なストーリー②・当日、家の者が怯えながら息をひそめていると、カジュアルなスタイルで、門の前をうろうろする見知らぬ男がいました。陰陽師に聞くと「あれが鬼っしょ」と言うので家中の者が「まじかー」と怯え、恐怖度は増します。
しかし気が付くと何と、その男はいつの間に家の中に入っていました。すると、家主の息子は、物陰から弓を構え、陰陽師が止めるのも聞かず、鬼に向かって矢を放ちました。
雑なストーリー③・矢は鬼を射抜きました。すると鬼は消えて、矢は跳ね返って来ました。
家の者は矢を放った息子を「何すんのよー」と咎めましたが、息子は「もーどーせ鬼に殺されるんなら、鬼を射った者として後世に名を残そうと思ったんだい」と言いました。
雑なストーリー④・陰陽師も驚いていましたが、その後、その家に悪い事は起きませんでした。
この出来事は、陰陽師が金儲けのために仕組んだ可能性もあるけれど、カジュアル男は、勝手に入ってきたり、射抜かれたのに矢が跳ね返ってきた事を思うと、ただの悪い人間ではなく、鬼だった可能性もあるのです。鬼が人の姿で現れるのは、大変珍しい事だと、言い伝えられました。
野式部の雑な感想
以前、僧が尊いと拝んだ仏の化身を、獣に違いないと思い、射った猟師の話がありましたが、この話も誰が悪くて誰が正しいのか、よくわからない所があります。
陰陽師を疑う文章からも、安倍晴明のような、ぶっちぎりスーパーヒーローがいた反面、人を怖がらして無駄な儀式をしてお金を得ていた陰陽師もいたのでしょう。でも、やっぱり鬼なら射ってもいいのに、それを止める陰陽師は、怪しいですね。侵入場所も陰陽師が教えたのかも、と思ってしまいます。
次回は「今昔とんでも物語」㊺を、お送りします。お化けが出る屋敷の話です。
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