今昔とんでも物語㊾「箱の中の鬼」

さりげなく逃げる

平安時代末期の説話集「今昔物語」の中から特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回は、またも、お化け屋敷のお話です。(27巻14話)

小芝居の行方、途切れた結末

雑なストーリー①・昔、京に行くため、東国から来た男がいました。その途中で、日も暮れて来たので、供の者達と、どこかに泊まろうと思いました。すると、人の住んでいない屋敷があったので、荒れ果てていましたが、なんとかそこに泊まる事にしました。

雑なストーリー②・慣れない場所で、男が寝付けずに横になっていると、部屋の隅の置いてあった、馬の鞍とか入れるような箱から音がします。男は「勝手に泊まったけど、鬼でもいる所なんだ、ここ。やべー」と恐れていると、いよいよ箱の中から何かが出てくる気配がします。男は「今走って逃げても捕まるから自然に外に出てみよう!」と苦肉の策を考え、「そーだ、馬の様子が気になるから見てこようっと」と独り言風に呟き、こそっと馬の所に行き鞍をつけ、飛び乗り逃げようとしました。すると、箱から何かが出てきて怒鳴りました。

雑なストーリー③・「やいこらー逃げられると思っとんのか、ワレ!」と、男を追って来ます。男が馬を走らせながら振り返っても、暗くて、どんな生き物が追って来るのか見えませんが、大きくて恐ろし気、声すら怖いのです。そして案の定、速い。男は橋まで逃げましたが「到底、逃げ切れまい」と思い、馬を降り、橋の柱に隠れました。

雑なストーリー④・恐怖に震えながら「観音様、助けて!」と祈りますが、鬼が追ってきて「どこじゃワレ!」と何度も怒鳴ります。男が「もしかして逃げ切れる?」と、淡い希望を抱いた時でした。「ここにいるよ」と、暗闇の中、何者かが出てきました。

野式部の雑な感想

鬼に追いかけられ、絶体絶命!そこに、別の者の声!続きが気になりますが、なんと続きはないそうです。無くなったそうです。これも昔話の醍醐味でしょうか。出てきたのは誰だったのか、「ここ」とは、男の隠れている場所なのか、注意をそらす為に違う場所を言ってくれたのか、謎は深まります。

欠損と言えば、小泉八雲様の「怪談」にも、そうゆう話があります。原本が途中でなくて続きが分からないのです。そちらは、ある男が、お茶を飲んでいると、何とその茶碗の茶の中に、見知らぬ男が笑っているのです。イラついた男はそのお茶を飲み干します。すると数日後、茶碗の中の男の霊が現れたので斬りつけると霊は消えます。また数日後、次は霊の部下と名乗る男達3人がかたき討ちに来たと言います。話はそこで終わりです。わからないとなると余計に気になりますが、その謎が解ける事は、おそらくないのです。

次回は「今昔とんでも物語」㊿は、鬼の話の最終回、嫉妬深い妻の出てくるお話です。


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