今昔とんでも物語⑲「大臣の昔の恋バナ」

初めて会った恋人

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、運命の一夜を過ごした男女の物語です。

いきなり恋人、そして6年間放置!

雑なストーリー①・鷹狩りの好きな、身分も高い美男子の青年がいました。ある日、鷹狩りの途中で大雨に降られてしまい困りますが、それほど立派ではない屋敷を見つけ、泊まらせてもらうことにします。

雑なストーリー②・青年は手厚いもてなしを受け、夕ご飯を出してもらうのですが、運んできた娘が何とも可愛らしく美しく、この屋敷に似つかわしくない程の気品があります。この屋敷の主の娘です。娘は下がりますが、夜も深まり、娘の事が気になってしょうがない青年は「こっち来て一緒に寝ようよ!」と声を掛けます。すると先程の娘が恥じらいながらも入ってきて2人は共寝するのでした。

雑なストーリー③・青年は娘を気に入り、「いづれ迎えに来るから、変な男と結婚とかしちゃ駄目だよ」と言い含め、自分の太刀を娘に残して帰って行きます。

雑なストーリー④・青年は、ずっと娘の事が気掛かりでしたが、なんやかんやとあり、あっちゅーまに6年くらいが経ちました。あの夜のお供だった馬飼いも退職してしまい行く手立ても無くなってしまいました。しかしある日、その馬飼いがご機嫌伺に訪ねて来たので、「あの屋敷への行き方、覚えてる?」と聞くと、覚えているとの事なので早速、共に向かいます。

雑なストーリー⑤・屋敷を訪ねると、いつぞやの娘はビックリするほど美しく成長していました。そして隣には、5,6歳の愛くるしい娘が。聞けば案の定、あの時出来た子供。青年は深い縁を感じて、2人を自分の屋敷に連れ帰り大切にします。夫婦となった2人は、優れた子供に恵まれました。

野式部の雑な感想

とんだシンデレラストーリー、とも思えるかもですが、一つ間違えると大変な事になったのです。昔話にはよくある状況ですが、男の都合と心情はともかく、数年ほっておかれて、後ろ盾のない女性だったら、生きてはいられないのです。この話の青年は、遊びではなかったし、娘も親の庇護で暮らせたから良かったけども。控えめに言っても「出会ったその日に関係を持たされ妊娠させられ6年間音信なし」は、ひどいと思います。

ただ、へそ曲がり人間としては、邪推してしまいます。もちろん娘の両親は、青年の身元を聞いていたので、わざと娘に食事を運ばせたのは間違いないですが、迎えをずっと待たせておくのは将来が不安ですよね。だから、こうゆう雨宿り貴公子が他にも何人か居たか、なんならこっそり誰か近場の男と所帯を持たせて、もし迎えが来たら子供を「貴方様の子供です」と言えば良いのではないいか、と思うのですが。

恐怖のワンポイント・アドバイス

「今昔物語」の各話のラストに、語り手の一言があります。時には現代の価値観では許容出来ないような一言もあるのですが、今回は「偶然の雨宿りが縁になったとは、前世からの契りがあったからだろう」みたいな言葉です。わざわざ「縁」を持ち出すのは、本来なら縁のない程の身分差を強調しているのです。話の所々に「下賤の者にしては」とゆう言葉が出てきて、当時の身分差別の価値観が伺えます。身分の低い人を人とも思わない、ましては青年は高貴な身の上ですから、身分の差を気にせず、本人を重視して屋敷に迎えたのは当時では、誠実と言えるでしょう。女に手を出しながら身分が低ければ、ゴミのように捨てる男もいたのですから。身分関係なく捨てる男もいましたし。

次回は「今昔とんでも物語⑳」は、治療費と宿泊費を踏み倒した女性のお話しです。

追記・お盆の法要で西日本に行っていた為、投稿が遅れまして申し訳ありません。


この記事が少しでも面白い!と思っていただけたら、
応援のクリックをいただけたら嬉しいです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA