今昔とんでも物語①

お后様と鬼

平安時代に編成された「今昔物語」には、沢山の話があります。かなり自由な物語のその中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。

世紀の美女が公衆猥褻!ー染殿后のお話ー

ストーリー①・昔、帝のお后様に大変な美女がおりましたが、よく憑りつかれやすい体質でした。ある時、手強い憑き物を落とすために、有名な聖人(お坊さんのような修行をした人)をお呼びしましたら、スッキリ憑き物は取れました。しかし偶然、聖人がお后様のお姿をチラ見しましたら、あまりの美しさに心を奪われてしまうのでした。辛抱たまらず、お后様を襲った聖人は捕らえられますが「もう自分は、これから死んでから鬼になって后と愛し合うんだからね!」なんてぬかす始末。帝とか、后の父親の大臣とかも、なんか怖くなっちゃって、聖人を住んでた山に帰すのでした。

ストーリー②・果たして聖人は早速鬼になって、后の住む屋敷に、アイルビーバック。常ならぬ鬼の姿の登場に、人々は恐怖し、逃げ惑うばかり。ところが后は、鬼の妖力でおかしくされてしまったのか、「あらっ、ターさん、ひさしぶりぃ」みたいな久しぶりに来た常連客に挨拶する、バーのちいママのような風情で鬼の訪問を受け入れるのでした。

ストーリー③・それから、ちょいちょい通ってくる鬼。とにかく怖いので誰にも止められません。后が少し落ち着いたらしいと聞き、夫である帝が訪ねると、昔と変わらぬ素敵な女性です。しかしそこに、鬼登場。するとどうゆうつもりか、鬼と后はわざわざ、人前に出てきて、行為を始めたので、屋敷はパニック。物語はここで終わります。

恐怖のワンポイント・アドバイス

数ある今昔物語の中でも、センセーショナルなお話です。自分を襲った相手を好きになる人間など現実にはいませんが、狂気の一途さに繊細なお后様は、ほだされた?と思わないこともないのですが、人間から鬼になるって、ほとんど名残もないほどの別人なので、断れない優しい女性だったのかしら、なんて思うとちょっと面白いです。

「今昔物語」の各話のラストに、語り手の一言があります。教訓的な「こうしたら、こうなるよ」みたいな事なのですが、時々現代の価値観では受け入れがたいような、恐怖の一言もあるのです。そこにも注目して行きたいと思います。

今回は、「高貴な女性は、お坊さんでも近づけちゃいけないよ」的な結びでした。人によると思うけど、用心に越したことはないってことですね。でもまさか、偉い聖人が鬼になるとは、誰も夢にも思わなかったでしょう。


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