今昔とんでも物語【79】鮒も驚く夫婦愛

鮒も驚く話

今回は魚に関するお話です。平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中から、特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。

近江守彦真の妻の往生(15巻48話より)

雑なストーリー①・昔、近江の国司がおりました。その人の妻は、大変信心深く結婚したけれど、夫と同じ布団に眠らず、触れることもせず、身を清く保ちながら念仏を唱え生活していました。やがて罪を作らぬために夫婦別居を望むようになり、夫はそれを受け入れました。

雑なストーリー②・そのうちに妻は病気になり、夫を呼んで言いました。

「私達夫婦、俗世にまぎれず清い生活をしてきたから、いい線いってると思うんだけど、ひとつだけ気掛かりがあるのよね。前に知人からお裾分けで鮒を二匹貰ったんだけど、殺生は良くないから食べずに家の井戸に入れたのよ。でも、広い世界に居た魚が狭い場所で辛い気持ちでいるかもしれない。だとしたら、それが極楽往生の障りになるかも…」と。

雑なストーリー③・それを聞いた夫は「アホかいな。そんな事が往生の障りになるもんかいな」とは言わずに「そうかもねぇ」と妻に応え、井戸の中を探して、鮒たちを見つけ広い入り江に放してあげました。

雑なストーリー④・その後、妻が亡くなる時には、苦しまずに蓮の香りが辺りに漂い紫の雲が立ち込めました。立派に極楽往生した、と誰もが尊いと思いました。どんなに真面目にくらしていても小さな事が往生の障りになるかもしれない、と人々は話し合いました。

野式部の雑な感想

下世話に思われるかもですが「結婚って何だっけ?」と思ってしまいます。夫婦にも愛情にもそれぞれあり、お互いが望んで法に触れなければOKなのかも知れません。でも広い世界には結婚相手に「私は信心深いからあなたと一緒に眠りたくないし触れたくもない。だから別居してお互いへの愛を大事にしよ」と言われたら激怒する人もいるだろう、と思います。

次回は「今昔とんでも物語【80】」を、お送りします。河辺で困っちゃう僧のお話です。


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