今昔とんでも物語【64】前世とお経・後編

マイケルと一緒

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。今回も僧とお経のお話です。

華麗なる転生遍歴

その①・前世は犬(14巻16話)

昔、あるお寺に勉強熱心な僧がいました。しかしお経の中にどう努力しても覚えられない箇所がありました。なんとか覚えられるようにお祈りしていますと、その夜の夢に天童(子供の天の使い、よしみではない)が現れ言いました。

「君の前世は犬で、お経を唱えていた人の家の軒下で母親犬と聴いていたけど、途中で母犬が床下から出たので一緒に出た。途中までしか聞いていないからその先は覚えられないんだ」

僧は目を覚まして驚きましたが、必ずお経を全部暗唱できるようになろう!と思いを新たにしました。

その②・前世は蛇(14巻17話)

昔、あるお寺に気性の荒い僧がいました。お経の中にどう努力しても覚えられない巻がありました。なんとか覚えられるようにお祈りしていますと、その夜の夢に夜叉が現れ言いました。

「君の前世は毒蛇で、ある宿場に泊まった聖人を食べてやろうと部屋の外の草むらで待ち構えていたんだ。聖人は一晩中お経を唱えていた。朝になり聖人は出て行った。お経を聴いたから人間に転生できたけど、途中迄しか聴いてないからその先は覚えられないんだ。今の気性の荒さも毒蛇の名残だからね」

僧は目を覚まして、色々努力しました。

その③・前世は牛(14巻18話)

昔、あるお寺に勉強熱心な僧がいました。しかしお経の中にどう努力しても覚えられない巻がありました。なんとか覚えられるように山に籠ってお祈りしていますと百日目に夢のお告げがありました。

「君の前世は牛で、飼い主がお参りに来た時、外でお経を聴いていたが、飼い主がお参りを済ませて戻ってきて一緒に帰ったから最後までわからないんだよ」

僧は目を覚まして、色々努力しました。

野式部の雑な感想

今回も色々な生き物のラインナップでした。正直、「お前の性格がそうなのは前世のせいだよ」と誰かに言われたら「何言ってやがる、証拠でもあんのかよ⁈」と怒鳴ってしまいそうですが、お話の中の僧はもれなく受け入れて人生をより良いものにしようと努力するのでした。

今回、全中後編としてご紹介した話の中には無いのですが、前世が黒い牛だったから、今生も色黒なんだよ、と言われる話があり、魂が転生するとして何で前の肉体の特性が残るのか、とちょっと気になりますが、そこはあくまでファンタジーとして右から左に受け流したいと思います。

次回は「今昔とんでも物語【65】」を、お送りします。引き続き僧のお話です。


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