炎の侍女列伝!古典の世界より
現代人に不可解な価値観の一つ「主従愛」。平安時代の姫君にとって侍女は、友人であり、相談相手であり、情報網であり、太鼓持ちであり(肯定的な意見で気持ちを引き立ててくれるような意味で)ともかくあらゆる役割を果たす存在でした。今回は「蜻蛉日記」以外の古典も併せて、その深淵なる侍女の世界について語りたいと思います。
運命共同体!藤原道綱の母の侍女たち
あまり日記の中に特別な侍女たちのエピソードはないのですが、それでも端々に侍女たちの存在を感じます。勝手に思うのですが、家族仲がいい屋敷は使用人たちを家族のように扱うのではないでしょうか。共に喜び、共に泣き、共に怒り、長い時間を共に生きる仲間なのです。しかしその反面、プライドの高い道綱の母にとっては、様々な出来事が自分はもとより、侍女たちの手前、余計辛い時もあったのではないかと思ってしまいます。
大活躍のスーパー侍女!落窪物語の阿漕
日本のシンデレラ物語と言われる「落窪物語」。とはいえ不運な姫君はすべてに受け身。そんな主人のために奔走する侍女、阿漕。その働きは目覚ましく、暮らしの必需品の調達から、結婚相手の選別、姫君が義母からの嫌がらせで軟禁状態になってしまった時も、味方との連絡係となり見事救出に導きます。姫君と共に幸運をしっかりと掴みますが、実父にすら無視されていた孤立無援の姫君を、支え続けた阿漕のエネルギーは大変なものです。
姫君の貞操を一晩中守る!源氏物語、浮舟の乳母
強制性交が横行していた平安時代、それでも強く「ノー!」と言うのも憚られる姫君の代わりに、阻止する侍女も居ました。光源氏の孫にあたる皇子が、こともあろうに自分の妻の異母妹を見初めて抱きしめちゃいますが、姫君の乳母が睨みつけて邪魔して事なきを得ます。その後、皇子と姫君は恋人になりますので「あの時凄い睨んだよねー」なんて皇子にからかわれたりしますが、相手が高貴な身分であろうと、必死で主人を守る姿は感動的です。
たまに居る悪い侍女!姫君を売る対価は男の体⁈源氏物語、女三宮の侍女
侍女の中にも、当然悪い人もいます。良い時はともかく、姫君が後ろ盾である両親を亡くし頼れる夫も居ないとなると、主人を助けるどころか財産を着服しトンズラする侍女もいました。
また、現代人からすればとんでもないですが、貴族の殿方が姫君を手に入れたいと思った時、その侍女に近づくのはよくあることでした。光源氏の好敵手の息子、柏木は光源氏の妻となった姫君に近づくため、その侍女と関係を持ちます。初めは断っていた侍女も色々思う所があり、遂に柏木が姫君に夜這いをかける手引きをしてしまうのでした。こうしてみると、姫君が助かるか助からないか、侍女次第と言っても過言ではないかもしれません。
陰謀、犯罪、なんのその!吉屋信子先生作「女人平家」
かの平清盛は子沢山でした。母親の違う姫君達の侍女たちは、姫君そっちのけで強い対抗意識を持ち、熾烈な戦いを繰り広げ、しまいには放火する侍女まで出てきました。自分の主人に心酔し、ダーティワークにも手を染める侍女。主人の出世が自分の人生にも影響するのですから、必死になるのは当然かもしれませんが、時には命懸けの忠誠心は、戦場で主人を守る男の従者に比べても、何の遜色もないと言えるのではないでしょうか。
これで蜻蛉日記の登場人物はだいたい網羅したとゆうことで(勝手に)次回からは蜻蛉日記における「もしも~だったら」シリーズを始めたいと思います。
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