野式部の私の好きな古典BEST10④
第7位 とはずがたり
個人的に好きな、心に残った古典作品をベストテン形式で発表していこうとゆう呑気なシリーズです。お気軽に読んで頂ければ幸いです。なお古典の解釈も呑気になっております。
乱れに乱れた性の饗宴、平安デカタンス(退廃)!
「とはずがたり」のタイトルを古典の本の中に見た時、「?」と思いスルーしていました。「誰からも聞かれてないけどさ、アタシは語りたいのよね。この数奇な人生を…」って感じの「問わず語り」の意味だったと知り驚きました。しかしその内容こそが、真に驚くべきものだったのです。
「とはずがたり」は日記です。虚構も含まれるとの説もありますが。作者「後深草院二条」は(以降、二条とさせて頂きます)平安貴族の娘で、亡くなった母が乳母を務めた皇子に仕えます。本来なら乳兄弟(同じ乳で育った子供達)は強い絆で結ばれるのですが、乳母であった母が、皇子に性の手ほどきもしたので、話は変わってまいります。二条は生まれる前から深い因縁で、この皇子と結ばれていました。自分の母親の恋人とゆう事は、自分の父親である可能性もゼロではないのです。さすがに違うようですが。オーギュストとジルベールでは無かった。
父親までも亡くし、孤立無援。パパの遺言も意味深…
皇子は帝位に着き、早々と譲位し以後「院」として人生を送ります。その希望で幼い頃から、お仕えしていた二条は、突然、院から手荒い性の手ほどきを受けます。本当なら側室の1人にしてもらいたい所でしたが、色々な兼ね合いで、そのまま院御所の女房としてお仕えする事に。そんな折、二条の父親も亡くなります。「この家から好色の名を残してくれるな。でも出家したら好きにしていいよ」と娘に言い残して。パパとして、娘が好色になりそうな予感があったのでしょうか。なんて深読みしたくなります。
自分の女に他の女との恋の手引きをさせる!非道な男!
当時は当然でも、現代人には到底理解できない風習があります。貴人は自分と肉体関係がある女に、目星をつけた女との仲介を頼むのです。正直、人となりをより知る訳ですから、なにかと効率が良いかも知れないけど、ひどくないですか?自分の彼氏に「あの娘、ちょータイプだから電話番号聞いてきて。あとデートスポット、予約しておいて」と言われるようなものです。(内容が古い…)この時代、身分がすべて、自分より身分が低いと、人とも思わない所があります。二条も一生懸命、院の恋路の成就を目指し、奔走します。嫉妬しないのかしら、と思うけどゲーム感覚なんでしょうか。まぁ、嫉妬してもしなくても、結果は同じですけども。
皇族なのにダレトク?レンタル彼女、始めました!
主人の恋の手引きをするのは、侍女の仕事の範疇ですから仕方ないとしても(一夫多妻制だし)この院はなんと、他の、二条を好ましく思っている男性に、二条を貸し出してしまうのです。
院の御所である夜、宴が開かれ、客人として泊ったイケおじの貴族の男性が、二条を呼びます。院の側に、はべっていた二条が、内心「なんなの、やーね」と無視していると、なんと院が「行ってあげなよー」と何度も促します。仕方なく二条はイケおじの所に。それが何と二夜も続きます。
自分なりに、恋人を他の男にレンタルできる院の気持ちの可能性を考えてみました。
①ホントは辛いけど、プライドでやせ我慢。ちょっとした精神的マゾ。
②まさかの、二条をもう好きでもないので、どうでもいい。ただの手駒。
③間接的な3Pをしたい、まことに少数派のセクシャリティだった。
答えは誰にも解りませんが…。他にも、二条に熱烈懸想した高僧がおられまして、仕方なくちょっと付き合いましたが「やっぱ別れるー」と告げたら、呪いの文を寄こしたのです。その辺りのいきさつを知った院は「また付き合ってあげなよー」と二条に命令します。
そのくせ二条が自力で見つけた恋人にはつらく当たります。精神構造、複雑すぎます。
平安のファムファタール(妖女)、院の棺を裸足で追う
しかし、院との別れは突然訪れます。何かにつけ二条を目の敵にしていた、院の正妻格の女性がいよいよ怒り、追い出そうとします。頼みの院も何故か、助けもせず悪態をつく始末。泣く泣く院の御所を出た二条は、修行の旅に出たりしたのち、出家します。そして数十年後、院死去の知らせを聞き、駆けつけますが個人で見送るしかなく、バタバタしてわらじが脱げても二条は、院の棺を追いかけるのでした。
二条と院の間に渦巻く愛憎は、他人からすれば、あまりに不可解ですが、御所を出て、もし院に恨みや憎しみを持っていれば、遺体の棺を裸足で追いかけたりしないでしょう。この「とはずがたり」は院との愛の日記とも言えます。しかし同時に、身分ゆえに虐げられた者の、告発でもあるように思えてなりません。
ともあれ、この二条とゆう女性は、魅力がありすぎてモテすぎて、奔放なイメージが強いですが、賢く、強く、誇りをもって生きた、これだけは確かな事なのではないでしょうか。
次回は、野式部の、私の好きな古典、第6位を発表します。
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