野式部の私の好きな古典BEST10⑤

琵琶法師、芳一

第6位 「怪談」より耳なし芳一

個人的に好きな、心に残った古典作品をベストテン形式で発表していこうとゆう呑気なシリーズです。お気軽に読んで頂ければ幸いです。なお、「古典」の解釈も呑気となっております。

不条理、ホラー、鎮魂、耽美、残酷、そしてエロ…

子供の頃、昔話のアニメが大好きでした。その中で特に心に残った物語の1つが「耳なし芳一」でした。「怪談」は近代の作品だろ!と思う方いらっしゃるかもですが、話の核にあるのは平安時代末期の源平合戦ですので、古典として書かせていただきます。

寺に1人でいる、芳一を呼ぶ、武士らしき声…

まず、主人公、芳一は、盲目で身寄りもなく、住職の好意である寺に住んでいます。琵琶の弾き語りの上手と評判です。寺の者が出払ったある夜、「さる高貴な方がお前の琵琶を聞きたいと仰せだ」と男が迎えに来ます。ついて行き、大勢らしき人々の前で、琵琶を披露すると大変歓ばれ、また来るように言われます。

雨の中、墓の前で琵琶を弾く芳一、その周りに無数の鬼火

夜に出掛けていく芳一を心配した住職が、寺の者にこっそり後をつけさせますと、なんと芳一は誰もいない墓の前で琵琶を弾いていたのです。戻った芳一に話を聞きますと、どうやら怨霊に憑りつかれてしまったよう。住職は、迎えが来ても二度とついて行ってはいけない、さもなくば、いずれ命を落とすことになるぞ、と芳一に言います。

全身にお経を手書き!でも、うっかりしちゃった!

全身にお経を書くと、亡霊からは、見えなくなるのでした。案の定、いつもの武士らしき男が迎えに来ますが、芳一の姿は見えません。しかしよく見ると耳だけが見えるのです。うっかり耳だけ、お経を書き忘れてしまったのです。亡霊は見える耳をむしり取って、帰って行きました。

滅びた平氏の亡霊が、「壇ノ浦の戦い」を聴きたがった…

大人になってから知りました。芳一の琵琶の弾き語りは「平家物語」であり、それを聴きたがったのは何と、「平家物語」の当事者、平家一門のいずれかだったのです。源平のいくさの後、平家物語を弾き語る琵琶法師が多数、現れました。それは、あまりにも栄えたのち、跡形もなく滅びた平氏を哀れに思う人々が必要とした、平家への鎮魂歌だったのです。

芳一には災難でしたが、成仏もできず彷徨い、自分たちの物語を聴きたがる亡霊たちが、哀れでなりません。迎えの人だって「今日は芳一、いなかったー」では済まされない、迎えに行った証拠として、耳を引きちぎって持って帰るとゆう必死さが、強い執着を感じ、また哀れです。

まさかの後日談

子供の頃は、憤慨しました。亡霊が心奪われるほど、琵琶の弾き語りが上手な芳一が、何でこんな目にあうのか。そもそも、目が不自由なのに、耳まで持って行かれるなんてあんまりですよ。(でも耳は無くなったけど、鼓膜が無事なら聴覚は残った?)教訓的な昔話の多い中「耳なし芳一」は、あまりにも不条理でした。怖くて、残酷で、あと不謹慎かもですが、素肌にお経を筆で書くとゆうのがセクシャルに感じました。諸々含めてインパクト大な物語だったのですね。 昨今、昔話の倫理観や残虐性を問題視する声もありますが、このまま伝わってほしいなと願います。

しかし、この出来事で芳一は有名になり、琵琶の弾き語りを聴きたがる人が後を絶たず、裕福に暮らせたそうです。かと言って「めでたしめでたし」ではない物悲しさが残ります。芳一はきっと、心が優しくて、弱者となった平氏に、同情と共感があったのだと思います。

次回は野式部の私の好きな古典、第5位を発表します。


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