今昔とんでも物語⑳「病気を治して逃げた女」

前相談

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は賢いと狡猾のボーダーラインにいる女のお話しです。

重病をタダで直した美女

雑なストーリー①・ある所に、腕が良くて女好きのベテランの医者がいました。ある日、見知らぬ牛車が、自分ちの中にどんどん入って来ちゃって「何事?誰?」と訝しんでおりますと、車の中から知らない女の声で「お願いがあるから私のために離れの部屋を用意してよ」と言って来ます。医者は、内心期待しながら言う通りにします。牛車やお供は逃げるように去り、残ったのは、女とお供の女の子だけでした。

雑なストーリー②・果たして現れたのは、好みの美女でした。その女は、自分の病気を治して欲しい、と頼みます。その立ち居振る舞い、物言いは「あれ?昔からの知り合い?」と医者が不思議に思うほど、堂々と打ち解けたものでした。早速診察しますと、足の間の奥に、瘡が出来ていました。かなり悪性なので、来るのが遅ければ助からない程の病状でした。ここで医者はスケベ心より医者魂に火が付き「絶対治そう!」と思い、自分の家の者も近づけず治療に専念しました。

雑なストーリー③・名医自らの懸命な治療の甲斐あって、女の病状は徐々に軽くなります。女は「こうなったらあなたを親と思います。完治の暁には私の素性や屋敷も教えますから、帰りはあなたの車で送ってくださいね」なんて言いますので医師はホクホク。「この人が人妻だったら時々通ってもらって、独身だったら妻でもいいかなー」と夢が広がります。

雑なストーリー④・そんなある日、医師自ら部屋に食事を運ぶと、女とお供の女の子がいません。トイレかな?なんて思い、また後で来てもやっぱり居ません。着物とか脱ぎっぱなしで置いてあるし、持ち込んだ日用品もそのままですが、そのうち「逃げられた⁉」と思い至るのでした。家の者全員に探させましたが、女もお供の女の子も見つかりませんでした。

考えてみると、女の何も知らないのですから、探しようがありません。医者は後悔します。その悔しがる様に、家の者は陰で笑い、そのうち世間にも知られ、物笑いにされたのでした。

野式部の雑な感想

ただの踏み倒し女とも思えますが、場所が場所ですし、匿名で治したかった所もあるのでしょう。しかも名医に真剣になってもらうために「治ったら恋人になってあげる♥」みたいな雰囲気出したのかも。ただ、治したいけど秘密にしたいし恋人にもなりたくない!とゆうのなら、夜逃げ(昼逃げ?)は仕方ないとしても、代金くらいは置いていけば?と思うのですが。まんまと騙して逃げ切った女は賢く、騙された男はお馬鹿さん、とゆう価値観を感じます。色好みが賞賛される時代でも、高齢だと嘲笑する風潮があったようです。

次回は「今昔とんでも物語㉑」をお送りします。またお医者さんが出てきます。


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