今昔とんでも物語㉑「胎児の肝を求めた男」
平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、前回に続き医師が登場しますが、怖い治療法のお話しです。
唯我独尊男の恐怖の一言!連携プレーで切り抜けろ!
雑なストーリー①・勇猛な武将であり、地方の国司を務めている男が、ある傷が治らず困っていました。そこで京から極秘で、有能な医師を呼び寄せ、診察してもらうと「この傷は、男の胎児の肝から作る薬で治ります。公にできる薬ではないけれど、急いで治療しないと、この方法でも効かなくなります」と言われます。男は医師を帰したあと、息子を呼びつけ「そうゆう訳だから、妊娠中のお前の妻のお腹の子頂戴ね。普通に薬局で買ったらわしが矢傷を負ったことがバレちゃうから」と伝えます。息子は内心はともかく、父親には逆らえないので「承知しました」と答えますが、慌てて医師の宿泊先に向かいます。
雑なストーリー②・「わが子の肝をくれって言われたんだけど!」と息子が医師に泣きつくと医師も驚き「そりゃ酷い。僕が何とかします」と答えます。医師は男の屋敷を再び訪ね、何食わぬ素振りで「肝見つかりそうですか?」と聞き、男が「ちょうど息子の妻が妊娠中だから、それで」と答えると「そりゃ駄目ですよ!血の繋がった胎児の肝は効きません」と進言します。
男は仕方なく、こっそり他の胎児の肝を求めて入手し、傷は治りました。しかし男は自分の傷を、言ってないのに矢傷だと見抜いた医師を、生かしては置けないと思います。息子を呼びつけ、京に戻る医師を盗賊の仕業と見せかけ殺すように命じるのでした。
雑なストーリー③・わが子と妻の命を救ってくれた医師を殺すわけにはいかない、と息子はひそかに医師を訪ね、父からの命令を伝えます。医師はビビりますが、息子は父の目を欺き、医師を京に帰す計画を立てます。医師は息子の言う通りにして、難を逃れ自宅に戻ります。後から医師が生きていることが父にバレますが、特に咎められなかったとゆう事です。
野式部の雑な感想
この「男」とは有名な武将、平貞盛であり、今昔物語内でも他に、勇猛な一面を見せる話があります。だからこそ、矢で射られた事を世間に知られては自分の名声と信頼に傷がつく、とゆう訳です。とはいえダーティです。我が孫に限らず、胎児の命と、腹を裂いて取り出すので妊婦の命と、2つの犠牲を強いても自分の病気を治そうとするとは。しかも息子の子の肝は駄目と知ると妊娠中の侍女の腹を裂き、女児だったので投げ捨てました。男児の肝を見つけるまで何回こんな非道をしたのか。更に傷が治ると、秘密を知った医師まで殺そうとするのですから。
お互いを助け合う医師と息子の連携プレーがこの話の面白みだと思うのですが、息子は医師を助けるために、決められた地点で、医師に従者の振りをさせ歩かせ、従者を馬に乗せ射殺して、父親に「医師を殺しときました」と報告します。この従者にとて家族はあるのですが。一見いい人に見える息子も医師も、自分達が助かる為なら生贄を差し出すとゆう、当時の命の重みの価値観については、現代では理解しがたいものです。
次回は「今昔とんでも物語㉒」をお送りします。児童の犯罪とゆう考えさせられるお話です。
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