野式部の私の好きな古典BEST10⑩

駆け回る巴御前

第二位 「平家物語」前編

個人的に好きな、心に残った古典作品をベストテン形式で発表していこうとゆう呑気なシリーズです。お気軽に読んで頂ければ幸いです。なお、「古典」の解釈も呑気となっております。

奢る平氏は久しからず…他人の分は払っちゃ駄目!

そうです。有名な言葉、「奢る平氏は久しからず」の「奢る」を、「人の飲食費を出す事」と、かなり長い間、思っていたのです。そんな私の平家物語との出会いは、高校時代の教科書でした。スケールの大きい物語ですから、前後編に分けてお伝えしたいと思います。前編の今回は「木曾の最期」についてです。

乳兄弟に守られて…木曽の山奥(当時)から一念発起!

教科書に載っていた、「木曾の最期」。何で平家の物語に源氏出てきた?と思いつつも、その世界観に、非常に強い印象を受け、古典に興味を持つきっかけになりました。戦に敗れた源氏の武将の息子、義仲は木曽に匿われ、「憎き敵、打倒平家!」を夢見て立派に成長します。とある皇子が「平家追討」の令旨を出したので「待ってました!」とばかりに挙兵します。斬新、かつ大胆な戦法で、平家を都落ちさせました。しかし諸々問題があり、何と平家が倒れる前に、同じ源氏の手で、命を落とす羽目になりました。ここでやっと「平家物語」は「平家」だけの物語ではなく、滅び行く「武士」の物語であると気がつくのでした。

「木曾四天王」と呼ばれた、乳兄弟。その絆と愛…

とにかく、義仲を預かった木曽の豪族中原氏。義仲の父親の家臣でした。一族総出で、義仲を支えます。しかし最後は、同じ源氏の、戦の天才、義経の軍に追い詰められ、ついに残り数名になってしまいます。すると義仲は、中国の英雄の伝説に因んで「生まれは別々でも死ぬときは一緒だよ?」と約束をした乳兄弟の一人、今井兼平を探し、合流します。「もう無理だから、せめて自害して。殿が変な人に打ち取られたら恥だよ?」と言う兼平の言葉に従い、義仲は一人馬を走らせます。薄氷の張った沼で足を取られてしまい、追っ手を食い止めている兼家が気になって、振り向いたその時、名のないような兵の矢に、首を撃ち抜かれてしまうのでした。兼平も、主君が打ち取られたと知るや否や、「あーもうヤダ」と自害して果てるのでした。

「女なれば去れ」妻になった乳兄弟、巴御前への捨て台詞

その美しさと強さで有名な女武者、巴は、義仲の妻で乳兄弟と言われています。最後まで義仲に付き添いましたが、もう自害…とゆう時に「お前は女だからどこなりと行きなさいよ。僕が最後まで女連れてたって人に言われたら恥ずかしいからね」と夫・義仲に言われてしまいます。乳兄弟の兄、兼平を最後に追いかけ回して、その妹、巴には「どっか行きなー」とはあんまりです。「これは男女差別じゃん。一当千騎と言われるほど、強かった巴を土壇場で、女だから帰れなんて!」と昔は思ってました。

しかし当時の風習を考えると話は違ってきます。敗れた一族は、たとえ生まれたての赤ちゃんでも、男は殺されてしまう。でも女は基本、殺さないのです。「将来、脅威になる力もない」との差別的な判断かも知れませんが、だからこそ義仲は、巴を追い払ったのではないでしょうか。

強い子供を産んでほしいから、その女、僕にください。

夫、義仲と別れた巴は、敵に捕らえられます。すると勝利軍の武士の一人が「こんなに強い巴さんなら強い子供を産んでくれるだろうから、僕の妻に下さい」と願い出たのです。その申し出は受理されます。巴はその武士に嫁ぎ、子を産んだのでした。その子は立派な武士に成長したそうです。

巴の再婚が、どんなものだったかは、知る由もありませんが、平氏を倒すためだけに殺りくに明け暮れた前半人生とは真逆な、平穏でささやかな生活であってほしかったと願うばかりです。

そして晩年は出家し、故人の菩提を弔い、供養したそうです。

次回は,野式部の私の好きな古典、第 2位の平家物語の後編を発表します。


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