源氏物語・私の好きな女君BEST10③

揉める叔父と甥

第8位 浮舟

身分、年齢、容姿、人柄まで、幅広い女性達が登場する源氏物語は、まるで女の百貨店です。その中で僭越ながら「好き」と申しますのは、「なんか気に食わない」みたいな事ではなく、「どのような運命を用意された人であったか」とゆう観点からの、個人的なランキングになっております。

二人の貴公子に愛されて…三角関係、平安時代の昼ドラ!

雑な人物紹介・浮舟は、母親の身分が低く、裕福な義父(母親の再婚相手)の実子ではないため、男から求婚を反故にされてしまった不遇の女性。実の父は無関心。なんか変えようと、異母姉の元に身を寄せると、高貴な男達との出会いが待っていたのです。宇治を舞台に繰り広げられる、めくるめくラブ・バトルの幕開けです。

人生ファイルその1・真面目だけど魅力薄…屈折男、薫君

浮舟は、光源氏の息子、薫と恋仲になり、宇治に隠し置かれます。しかしこの男が曲者です。まず、若くして亡くなった女性(浮舟の異母姉)の面影を求めての縁でした。しかも、そんなに似てなかった、とゆうか、ないものねだりなんですよね。浮舟の事も、大して好きでもなく義理で通ってた感じなのに、他の男に取られそうになると、俄然やる気出す、みたいな感じにも思えます。

実はこの薫くんは、とんでもない出生の秘密(母親の密通で出来た子だった)を抱えており、華やかな境遇とは裏腹に、影のある複雑な、お人柄なのでした。

人生ファイルその2・セクシーだけど浮気。お祭皇子、匂宮

そこに登場するのが、光源氏の孫、匂宮。皇子様で、浮舟のもう一人の異母姉の夫です。妻のお部屋で偶然見初めた美女が、薫の恋人と知っても諦めきれず、なんとか居場所を突きとめて押し入り、激しい情熱を浮舟にぶつけます。異母とはいえ、妻の妹に手を出しちゃまずいよな~とか考えないお人柄。しかし良くして下さった、異母姉の恩を仇で返す形となってしまい、浮舟は苦しむのでした。お世話してくれた薫にも申し訳ないし。義理と人情の板挟みです。

人生ファイルその3・愛の苦悩、そして流れ着いた先は…

浮舟と匂宮の関係を知った薫は、浮舟を宇治から京へ引っ越しさせようと計画します。それを知った匂宮は、その前にさらっちゃおうと計画します。二人の貴公子に愛され、板ばさみになった浮舟は、苦悶の末、宇治川に身を投げてしまいます。

人生ファイルその4・一度死んだ美女の胸に去来する想い…

浮舟は、川の何かに引っかかって一命を取り留めます。親切な人に保護され、色々あったけど出家して、自分を探しに来た薫の使者にも「私、お探しの人じゃないわ」としらばっくれるのです。匂宮も浮舟を失い病みつきますが、やがて立ち直り、次の恋を探すのでした。

光源氏、亡き後の話である「宇治十帖」。子孫らの恋愛を通して、紫式部は何を伝えたかったのでしょうか。「やっぱり光源氏は特別だったね」なのか「男なんてこんなもん」なのか。あるいはそれ以外か。ローランドなのか。

これも数ある「源氏物語の謎」のひとつではないでしょうか。

入水したものの助かった浮舟は、自分の母親の事を懐かしむのでした。自殺は良くないけど、この時代、この状況で追い詰められてしまったのです。本当は、匂宮と薫、どちらかだけを心底好きだったら、そちらを選べば良かった話ですが、どちらも不誠実な、真実の愛ではないと薄々感じていたのでは、と思ってしまいます。気楽な女性なら、イケメン2人に取り合われて、「モテ期!」と、ウハウハだったかもですが。

前回の「女三宮」と同様、出家によってしか本当の自分になれなかった、悲しくも潔い、女性の人生なのでした。

次回は、「好きな女君、第7位」をお送りします。


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源氏物語・私の好きな女君BEST10③” に対して1件のコメントがあります。

  1. コマト より:

    このブログ、面白いです!
    古典オンチですけど語り口が読みやすくていいです!

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