源氏物語・私の好きな女君BEST10 ⑧
第3位 夕顔
身分、年齢、容姿、人柄まで、幅広い女性達が登場する源氏物語は、まるで女の百貨店です。その中で僭越ながら「好き」と申しますのは、「なんか気に食わない」みたいな事ではなく、「どのような運命を用意された人であったか」とゆう観点からの、個人的なランキングになっております。
光源氏を虜にした!夜に咲き、朝に消えゆく薄幸の美女
雑な人物紹介・病気療養中の乳母のお見舞いに下町を訪れた、若き日の光源氏。ちょっと不思議な佇まいの隣家に咲いていた、珍しい花に気を留めます。扇に花を乗せ、言葉を添えて寄こした隣家の女主人こそが、夕顔だったのです。
人生ファイルその①・下町の珍しい花…その名は夕顔!
「夕顔」は、源氏物語の中でも、異色の女性です。出生は中流貴族の娘としても、下町に住んでいたのです。実は、光源氏の好敵手、頭中将の愛人だったので、おっかない正妻に脅されて、隠れ住んでいたともとれますが、寄る辺のない身の上、男を頼りにしなければ到底、生きては行けなかったでしょう。ずばり売春で生計を立てていた、とゆう見方もあります。
光源氏が「あの花なんていうの?持ってきて」なんてお供に言ってたら、素早いタイミングで扇に花を乗せ、「素敵な人ね。もしかして光源氏?」なんて言葉まで書いて寄こすのですから、びっくりです。やっぱり玄人なのでしょうか。
人生ファイルその②・聖女か悪女か?プレイボーイを骨抜き
夕顔は、あくまでも儚く、男の言いなりになる可愛い女性、とゆうイメージが強いかも知れませんが、最初のアプローチについての、偶然以外の可能性を考えてみました。
まず、良さげな青年が通ったら、「もしかして光源氏?」と言って気を引く。多分、当時の光源氏とゆうワードには、現代の「社長さん」以上の力がある。「ジャスティン・ビーバーに似てない?」みたいな。ナンパの入り口としては優れているのではないでしょうか。呼び込みの人の「あらっお客さん、いい男、寄ってかない?」みたいな声掛けと一緒です。そしてもう一つの可能性は、ずばり光源氏狙い撃ちです。そもそも光源氏の乳母の家の隣に住んでいたのも偶然ではないのです。そして蜘蛛のように糸を張り巡らせ、光源氏を待ち構えていたのです。
人生ファイルその③従順か奔放か。最も不可解な女性!
光源氏は、身分を隠して、夕顔の元に通います。そんな男を夕顔は平気で通わせ、詮索もしません。下町なので近所の生活感が駄々洩れで、「これじゃこっちのやり取りも、筒抜けじゃん!」と思ったかは分かりませんが、ある夜、光源氏は夕顔を連れ出し、知人の空き家に泊まります。素性を隠した男に知らない場所に連れて行かれるなんて、夕顔は断れなかったのでしょうか。やっと腹を決めたのか光源氏が「実は僕、光源氏だし」と告げても、驚いた素振りも見せません。やっぱり光源氏だと薄々察していたのでしょうか。その夜、夕顔は、光源氏の恋人の生霊(六条の御息所だとは、今回ははっきりしない)に妬まれて殺されてしまうのでした。光源氏は、突然の恋人の死に驚愕し、愛ゆえにねんごろに弔ってやりたい、と思ういますが、乳兄弟に「自分の将来考えて!」と押し止められます。男に連れ出されたまま、帰らない女主人。付き添いの侍女も戻れず、そのまま光源氏邸で働きます。ホラーです。その謎は、夕顔の娘、玉鬘の登場まで解けないのです。光源氏の激しい愛で、心臓発作を起こしたのでは、とゆう説もあります。生霊は責任転嫁ですよ。殺人事件も平安時代では、うやむやなのです。身分がすべてなのです。
夕顔の最大の特性は、二面性ではないでしょうか。純真無垢か計算尽くか、両極のどちらの可能性もあるような妖しい女性です。他の女君とは一線を画す存在として、光源氏の心に残り続けました。もし、死なないで済んだら、どうなっていたのでしょうか。
紫式部はどうして、光源氏を夕顔に夢中にさせたのでしょうか。これもとても不思議です。
次回は、「好きな女君、第2位」をお送りします。
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