今昔とんでも物語【99】愛を教えた童子

稚児の名言出た

今回は衝撃のお話です。平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中から、特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。

雲林寺の僧(17巻44話より)

雑なストーリー①・昔、比叡山にある僧がいました。とても真面目ないい僧でしたが、身寄りもなく、どうにもこうにも貧しかったのでした。財布事情で比叡山には居られなくなり雲林寺という寺に身を寄せました。自分の行く末の心もとなさを「何とかして下さい~」と鞍馬寺によくお願いに詣でていました。

雑なストーリー②・そんな帰り道の事です。夜道が暗くなってきたので急いで戻ろうとしていると何とも美しく若いお稚児さんが同じ方向に歩いていました。僧は「どこかのお坊さんの連れ?でもどうして一人きりで歩いているのかしら」と不思議に思い、声を掛けます。

雑なストーリー③・すると稚児は「馴染みの僧と喧嘩して飛び出してきちゃったの。貴方の行く所について行っちゃ駄目かしら?」と言うのです。僧はドギマギしながらも「僕は超貧乏だから君みたいな人には向かないんじゃ…」と答えますが、稚児は気にする様子もないので僧は自分の部屋に連れて帰ります。そしてその夜二人は枕を交わしたのでした。

僧はすっかり稚児の虜になってしまいましたし、朝、稚児を見かけた他の僧達は「なんであんなビンボー人の所にあんな奇麗な子が来る訳?」と驚き羨ましがりました。しかし嬉しい反面、僧の脳裏にはある不安が押し寄せるのでした。

雑なストーリー④・僧は意を決して稚児に聞きました。「君は稚児の格好をしてるけど本当は女性なんじゃ…そうなると仏の教えにも背くし困っちゃうな~」と。しかし稚児はしれっと答えました。「私が女でも男でもそんなことどうでもいいじゃない。それに稚児スタイルだから人にバレることもないし色々便利でしょ?」と。僧は「やっぱりこの人、女なんだわ…」と確信するものの稚児を追い出すことも愛することを止めることもできないのでした。

雑なストーリー⑤・そうこうしているうちに稚児が「子供できた」と言うので僧が慌てふためいていると「騒がないで。誰にも知られないようこっそり産むから」と言うのでした。そして月が満ちました。僧は隣の部屋でおろおろするばかりでしたがどうやら出産が済んだようなので行ってみると部屋に稚児の姿はありませんでした。布にくるまれた我が子を見てみるとなんと枕くらいの大きさのそれは金でした。

雑なストーリー⑥・愛する稚児がいなくなり寂しいですが僧は悟りました。「これは鞍馬寺の毘沙門天様が私の願いを叶えてお助け下さったのだ」と。そして少しずつ童の残した金を売り次第に裕福になっていきました。人々は「鞍馬寺の霊験はあらたかだね」と感心しました。

野式部の雑な感想

この話を知った時、ひっくり返りました。別の話で女好きで勉強しない僧を美女に化けて色仕掛けで勉強させた菩薩の話(17巻33話)がありましたが、そちらは最後まで指一本僧に触れさせなかったというのに。こちらは愛の結晶まで残していったのです。どうしてかと考えた時に、孤独すぎる僧には愛を知る事が必要だったのかと思いました。

それにしても愛する人の性別が分からないって何?と思いますが、映画にもなった実話でも、ある男性が京劇の女形(しかもスパイ)を女と思い込んで暮らしていたのです。

また大人気の韓国ドラマでもプレイボーイの青年が中世的な女性を美少年と相当長い間思い込んでいたのでした。純情ボーイならともかく、プレイボーイたるもの相手の性別くらい分かれ、と思ってはいけないのでしょうか。思い込みってすごい、というお話でした。そして人が思うほど性別の垣根は高くない、のかもです。

次回は「今昔とんでも物語【100】」を、お送りします。権力に飲み込まれた貴族のお話です。


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