今昔とんでも物語【102】後出しじゃんけん


今回は嫌な上司の登場するお話です。平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中から、特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。
丹後守・保昌の部下(19巻7話より)
雑なストーリー①・昔、藤原保昌と言う役人に雇用されている男がいました。その男は弓の名手で主からも評価され信頼されていました。ある時、山で鹿狩りをする予定が立てられました。
雑なストーリー②・鹿狩りの数日前の夜でした。男は夢を見ました。男の亡くなった母親が夢に現れて言いました。「私は生前ちょっと悪いことして鹿に生まれ変わりこの山に住んでるから。だから今度の鹿狩りで私を射ないようにね」。男は目が覚めてびっくりしました。
雑なストーリー③・男は何とか鹿狩りに出ないで済むようにならないかと主にお願いしましたが主は「何言ってんの!みんなお前が鹿をじゃんじゃん射る所を見たいのにお前が出られないんじゃ話にならないでしょ!」と怒るのでした。男は困りながらも「鹿狩りに出ても鹿を射ないようにすればなんとかなるかな」と考えました。
雑なストーリー④・鹿狩り当日になりました。男はいやいや参加しましたが、鹿の群れに出くわしたので一番立派な鹿を狙い矢を放ちました。すると振り向いた鹿の顔は母親のもので「痛い!」と叫んで倒れました。男は夢のお告げを思い出し「母親の生まれ変わりを殺してしまった!」とショックを受け馬から飛び降りその場で髻(もとどり。武士の証である、結った髪)を切り落とし出家を決意しました。
雑なストーリー⑤・訳がわからず驚いている主に男は夢のお告げの話をしました。すると主は「ばっかだな-!ちゃんと話してくれれば鹿狩りを欠席させたのに!」と言いました。
男は出家してとても熱心に修行しましたので聖人にまでなりました。人々は「親の化身を殺すなんてとんでもない罪だけどそれが出家のきっかけになることもあるんだな」と話し合いました。
野式部の雑な感想
名人の性(さが)と申しますか、どれほど心に決めていても獲物を目にした途端、反射的に手が動くと言いますか、悲しいお話です。下手な人だったら「絶対射る!」と決めても出来なかったり、かと言って「絶対外す!」と決めても何でか当たってしまったりするものです。
この男の雇用主は私の大好きな和泉式部さまの夫君なのですが、「鹿狩り休むなら首切るよ!」と脅したくせに後で事情を聴くと「言ってくれれば」なんて言うとは嫌な上司です。何から何まで部下の責任なんですね。結構有名な人ですが色々なまつわるお話に統一感がないような。人間ってそういうものでしょうか。

次回は「今昔とんでも物語【103】」を、お送りします。悲劇の美少年のお話です。
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