今昔とんでも物語㉘「平安怪力女2」
平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、怪力で大暴れする女性のお話です。
パワハラに立ち向かった!五百人力妻の末路
雑なストーリー①・昔、ある地方に、役人の男がいました。ある時、上司である国司から「お前の着ている衣はお前に相応しくない」と言われ、着物を取り上げられてしまいました。その着物は役人の妻が夫のために織った素晴らしい物でした。
雑なストーリー②・妻は、夫が出掛ける時に着ていた衣を着ないで戻ったので驚いて「どうしたの?」と理由を聞きます。理由を聞いた妻は夫に「あなたはあの着物を本当に惜しいと思う?」と聞きますと、夫は「本当に惜しい」と答えます。その返事を聞いて妻は1人、国司の屋敷へ出向きます。
雑なストーリー③・妻は国司に「夫の着物をお返しください」とお願いしますが、国司は応じず、家の者に「この女をつまみ出せ!」と命令するのでした。しかし家の者でこの妻より力の強い者はいません。そう、この妻はとんでもない怪力の持ち主なのです。妻は向かってくる国司家来衆にびくともせず、二本の指で国司をつまみ上げ門前まで運ぶと、国司は恐怖のあまり着物を返します。
雑なストーリー④・妻は婚家に戻り、着物を洗ってタンスにしまいます。しかし国司の報復を恐れた夫の両親が「あんな暴力妻とは離縁しな」と言うので夫は妻を離縁します。
雑なストーリー⑤・離婚され実家に戻った女が、船着き場のある川で洗濯物を洗っていると、荷物を乗せて運ぶ船の船主から「ピーピーお姉ちゃん、いいケツしとるやないか。ワイがこましてやろうかいな」みたいな卑猥な冷やかしを受けます。「やめてください」と警告しても止めないどころが、船を止めて女を殴りつけたのです。女は怒って、荷物と従業員乗せたままの船の端を引っ張って、なんと100m以上陸に乗せてしまいます。川に戻れず困った船主が謝ると、女は許して船を戻してやります。後で実験すると、女がした事は、500人の力でもできない事でした。「なんだってあの人には女の身で、あんな力があるんだろう」とみな、不思議がりました。
野式部の雑な感想
痛快で好きな話ですが、悲しくもあります。私はともかくこの夫、酷いと思います。上司に恨まれたくないなら、妻が着物を「惜しいと思う?」と聞いた時「残念だけどもういいよ。作ってくれた君には申し訳ないけど」とか言ってくれれば、妻だって取り返しに行きませんよ。そのくせ両親の勧めで離婚するなんて。本当は元々離婚したくてこう仕向けたんじゃ、と勘繰りたくなる程です。
前回同様、男が強い力を持てば、戦で手柄を立てたり、相撲で勝ったり、活躍できるのに、女だと良い事1つもないですね。女は男より劣っている、だから女に男以上の能力があっても無駄、とゆう当時の価値観に基づいたお話ではないでしょうか。
次回は「今昔とんでも物語」㉙を、お送りします。狐にまつわるお話です。
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