今昔とんでも物語㉙「狐が妻に化けた」

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、狐にまつわるお話です。

前門の妻、後門の妻!

雑なストーリー①・京に役人の男が住んでおりました。ある夜、その男の妻が用事で夕方に外出しました。なかなか戻らないので「おっそいな~」と男が思っていると、妻が帰ってきました。しかし、しばらくすると、全く同じ姿形の妻がもう1人帰って来たのです。

雑なストーリー②・男は驚きながらも「こりゃどっちかは狐が化けてるな」とまでは思うものの、どちらが妻でどちらが狐なのか、わかりません。そのうち何となく「後から戻った方が怪しい」と感じ、太刀を抜いて「お前が狐だろ!」と脅すと後から戻った妻は「あんた、恋女房の私になんてことすんのよ!二人の夜を忘れたのっ⁈」と泣き崩れます。

雑なストーリー③・そうなると今度は、先に戻った方の妻を太刀で脅すと、同じように泣き崩れ、これでは再放送です。男も困り果ててあれこれ考え抜いた挙句「先に戻った方の妻が怪しい」となり、そちらの妻を取り押さえていると、何と妻は異常に臭い尿を放出しました。そして男がその異臭にパ二クってる隙に、狐の姿に戻り、家から逃げ出し走り去ったのです。

雑なストーリー④・「この男はよく考えて、妻を両方縛り上げておけば逃げられずに済んだものを。狐も、夜に大通りに出たこの家の妻を見かけて、悪さをしようと妻に化けたのだろうが、何の得もない無駄な事な事で危険な目を見たものだ。でもまぁ、本当の妻の方を切り殺したりしなくて済んだのは不幸中の幸いだったね」と人々は話し合いました。

野式部の雑な感想

当時の狐は不思議な生き物です。同じ化ける仲間でも、狸とはキャラ違いと言いますか、人間を騙してやろう!と悪だくみしても、狸よりも残忍かつ淫らに感じます。しかし尿が臭かった件は、もともとなのか、人間の姿だから臭く感じたのか、特別な嫌がらせも含んでいたのか、謎は残ります。

この話の最期の部分は、語り部と言いますか、当時の価値観を記したものですが、こうゆう後出しじゃんけんみたいな言い方する人苦手です。ある日突然、近しい人が2人帰ってきたら誰だってパニックですよ。「両方縛っとけ」なんて偽物は良いけど、片方は本物なんですから、愛する人を縛れなかった、可能性なかったのでしょうか。太刀で切りかかりましたが。

次回は「今昔とんでも物語」㉚を、お送りします。次回も狐のお話ですが、今回とは、かなり趣が異なります。

昨日投稿するつもりが、きれいさっぱり忘れておりました。大晦日って、曜日感が薄れますね。申し訳ございません。

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