今昔とんでも物語㉚「法華経と狐」

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、人間と狐の儚い恋、あるいは、ワンナイトラブのお話です。

スケコマシ、賞賛される

雑なストーリー①・昔、身分もそこそこのグットルッキング・ガイが、京の町を歩いていました。すると、見たことも無いような美女が立っていたので「これを落とさなきゃ男じゃない!」と思い込み、猛烈アタックを開始します。人通りの少ない場所に移動して、延々と口説きます。

雑なストーリー②・すると美女は「貴方の言う事、やぶさかではないんだけど、あたしは貴方と交わると確実に死ぬ運命なんだけど…」なんて言うものですから、男は「こりゃ、体よく断ろうとしてんな」と感じ、ひるまず尚更に口説きます。美女も「貴方は家に帰れば妻子もあんだろうに、そんな人の行きずりの火遊びのために私が死んでもいいって訳?」なんて言ってきてちょっと揉めつつも、最終的に2人は交わってしまうのでした。

雑なストーリー③・日も暮れて2人はその辺の小屋に泊まります。そして明け方に女は言いました。「私は死ぬことになるから、私の後世を貴方が弔ってね。私の言う事が嘘だと思うなら、明日の朝、言う場所に来てみて頂戴。証拠になるよう、これを預かっておくわ」と男の扇を持って去って行きました。男は「いい女だったけど、変なこと言う子だったな~」と思いながら家に帰ります。

雑なストーリー④・しかし翌朝、男は「やっぱり、あの子が言っていたのは本当かも」と思い、言われた場所に行ってみます。すると、年配の女性が泣きながら立っていて、男に「あたしは昨日あんたが出会った娘の母親だよ。あそこに娘の亡骸がある事を伝えにきたんだよ!」とある方向を指さして消えて行きました。男が不思議に思いながらも、指さした方に行ってみると、若い狐の横たわった死骸があり、その顔には昨日、女が持ち去った男の扇が被さっていました。

雑なストーリー⑤・「そっか、自分が口説いた女は狐だったのか」と、男は軽いショックを受けながらも、その狐のために、法華経の一部を写経し、7日ごとに奉納し続けます。すると、男の夢の中に女が現れ言います。「貴方の供養のおかげで、位が凄く上がっちゃった、ありがとね♪」そして神々しい様子で天に昇って行きました。男は増々信心を強くしました。

野式部の雑な感想

不思議な話です。そもそも、この狐が、人間と交わると死ななければならない理由がわからないのです。人間と交わった各種動物の皆さん、元気にやってました。ただ、行きずりの関係の女性の言うことを信じ、約束を守って弔ったのは、立派だとは思うのですが(そうでない人が多すぎる)そもそも誰のせいで死んだか、と考えると「そんな偉いか?」と思います。いくら何でも、好みのタイプと出会ったからって、そのまま交わろうとするのは、さすがに性急かと。こらえ性ないんかい、妻子は泣いてますよって言いたくなります。でも、当時の価値観では「畜生」として低い階級だった狐が、死んだとはいえ、人間の供養のお陰で、高い身分になれたとゆう一発逆転劇、「ウィンウイン」とゆう事でしょうか。

次回は「今昔とんでも物語」㉛を、お送りします。狐から猫のお話に移ります。

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