今昔とんでも物語㊱「女を盗った鬼」

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、ほぼ同じお話が「伊勢物語」にもあるので、両方を足して割る感じにさせて頂きます。短いんです、「今昔物語」の方は。

遊び人、本気の愛は叶わず

雑なストーリー①・昔、京に大変美しく才気あふれる貴公子がいました。女好きも大変なもので「日本中の美女はワイのもんやで!」と息巻いておりました。

そんな貴公子、さる高貴な身分の姫君が、「マジありえない程の美人」だとの噂を聞きつけます。何とか我がものに!と口説きに掛かりますが、姫の親は「この子は高貴な方(帝)に嫁ぐことになってますから!」とけんもほろろ。しかしそこは「プレイボーイの名に賭けて!」と、地道に頑張り、秘密裏に姫のハート・キャッチに成功するのでした。
雑なストーリー②・しかし誰からも祝福されない恋、2人は駆け落ちすることに決めました。追っ手に捕まらないように、2人は逃げます。野を走り、貴公子は姫を背負って川を渡ります。すると姫は夜の草の上に光っている露を見て「あれ、なに?」と聞いてくるのでした。
雑なストーリー③・それどころじゃない貴公子は返事もせずに走り続けます。そして、半壊れの倉を見つけ姫をその中に隠し、自分は追っ手を警戒して戸の前で、弓を構えました。雨が降り雷が鳴ります。ふと倉の中の姫に声を掛けますが返事がありません。心配になった貴公子が戸を開けて見ると、姫は鬼に喰われて、頭と着物しか残っていませんでした。
雑なストーリー④・「あーこんな事なら、さっき姫が草の露を見て、あれは何かと聞いてきた時に『あれは露ですよ』って返事してそのまま露のように消え去りたかったよー」と貴公子は嘆くのでした。倉は鬼の住処だったのでしょう。知らない所に入るもんじゃない、と人々は言い伝えました。

野式部の雑な感想

 「今昔物語」では、姫は食べられていただけで、逃避行中の会話や後の嘆きは「伊勢物語」にあるものです。この姫様は、TPOをわきまえず、「あれなに?」と好奇心を抑えられないお人柄…これはお子様でしょうか?深窓の令嬢のならではのおっとり?本当に「私もあなた以外の人と一緒になりたくない!親の決めた結婚なんて御免よ!」と決断して共に逃げたのか、貴公子が勝手にさらっただけなのでは?と疑いたくなります。

 それにしても、高貴な姫君をさらった挙句、絶命させるとは、とんでもない大事件、大問題ですが、実は「鬼」とは、追ってきた姫の兄達だと言われています。妹が高貴な人に嫁げば親兄弟の出世に関わってくるので、そこは必死に連れ戻しに来たのでしょう。史実ではこの姫は皇后になりました。

次回は「今昔とんでも物語」㊲を、お送りします。今度は美女だらけの島のお話です。

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