今昔とんでも物語㊲「美女に化けた鬼」

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、おっかねー美女軍団のお話です。

美女だらけのぼったくりBAR

雑なストーリー①・昔、ある所(中国)に、「僧迦羅」とゆう字数の多い男がおりました。僧迦羅は商売のため、五百人の商人と、船に商品を乗せ、海を渡っていました。すると、突風が吹き、船は引き寄せられるように、ある島にたどり着いた後、壊れてしまいます。予定外の知らない島だけど、仕方なく全員船を降りて上陸しました。すると何と、美しい、いや、美しすぎる女達が出てきて歌い踊り歓待します。なぜか女しかいません。男達は「僕たち、商売で成功するのを夢見て、船に乗ったんだけど、流されてここにたどり着いて、船も壊れちゃって戻れないし、君達、僕達の面倒見てくれないかしら?」と、可愛く頼むと女達は「いいよー」と、結構気軽に承諾してくれたのです。
雑なストーリー②・女達の案内で男達は島を歩きます。屋敷は高い塀に囲まれ厳めしい門は錠がかかるタイプです。そして壁で仕切られた家がいくつもあり、一部屋に1人みたいに美女がいまして、男達は皆、妻を選んでそれぞれ暮らすようになりました。夢のような生活です。女達は毎日やけに長い昼寝をします。いくら美人とはいえ、ちょっと不気味に感じられました。
雑なストーリー③・なにか不穏なものを感じた僧迦羅は、女達の昼寝の隙に、こっそり抜け出し島を見て回りました。すると、避けるように案内されなかった屋敷がありました。門には鍵がかかっているので、僧迦羅は壁をよじ登って中を見ました。すると沢山の男達がいました。しかし、死んだ者、死にかけた者など、尋常ではない様子です。僧迦羅が屋敷の中に入り、生きている男を見つけ「これはどうした訳なの?」と聞きますと、恐ろしい事実を話し始めます。
雑なストーリー④・聞けば男は船乗りで、ほぼ同じ感じでこの島にたどり着き、女達と暮らしていたそう。しかし、次の船が着くと、女達は夫にしていた男達の足の腱を切り、動けないようにして閉じ込め、日々の食料に当てていくそうなのです。「あんた達も今は幸せでも、次の船が着いたら、俺達と同じ運命を辿ることになるから、女達の長すぎる昼寝の間に逃げな!」と忠告されます。
雑なストーリー⑤・僧迦羅は、慌てて屋敷に戻り、同じ船で来た500人の男達に真実を報告します。そして全員で屋敷を出て浜に来ます。とはいえ船もないし…困って皆でひたすら念仏を唱えておりますと、何と海から大きな白馬が現れます。観音様のお使いに違いないと全員で馬に掴まり、島から離れます。すると昼寝が終わった女達が異変に気付き、恐ろしい羅刹女の姿で追って来て、逃げる男達を罵ります。しかし白馬は男達全員を安全な陸に運んだ後、消えて行ったのです。

雑なストーリー⑥・九死に一生を得た僧迦羅でしたが、それから2年後のある夜、自宅で眠っていると、突然あの島で妻だった女が現れます。「あんた、酷いじゃなぁい、さよならも言わずに立ち去るなんて。何か誤解があったみたいだけど、あれからあたし達は夫を偲んで泣き暮らしてるんだから。戻ってきてよん」みたいに以前よりも美しい様子で言いますが、もう僧迦羅は騙されません。「黙れ、この鬼嫁がぁ!叩き斬ってやる!」と刀で斬ろうとすると、元妻は、怒りながら去って行きました。

雑なストーリー⑥・すると元妻は、何と今度は王宮に行って「尽くした夫に捨てられたんだけど!」と訴えます。女が美しすぎるので王様は一目で心を奪われてしまい、寝所に招き入れ関係を持ってしまいます。僧迦羅が「あいつは怖ろしい鬼なのよ」と進言しても全然聞きません。王様は女と愛欲に耽っていましたが、ある朝、女が寝所からフラフラ出て行くのを不思議に思った家臣が寝所の中を見ると、王様は女に食べられてしまって、髪しか残っていませんでした。

雑なストーリー⑦・王様の息子である王子は、怒って僧迦羅に船と兵を渡し、「鬼女達を滅ぼすように!」と命じます。僧迦羅は、あの島に行き、羅刹女達を1人残らず退治します。そしてその島を王子から賜り、兵たちと暮らしたのでした。

野式部の雑な感想

 映画のように長い話です。少し前の「橋に出る鬼」の話と同様、取り逃がしても、または人間が逃げ帰っても、追ってきて危害を加えようとする執念凄いです。そして、五百人が掴まれる巨大な馬の姿を想像すると楽しくなります。

勝手に思うのですが、ある人が「船旅で遭難して、たどり着いた島で怖い人達がいたので帰ってきた」と話したとして、それを聞いた人達が「その怖い奴らが追って来るかも」とか酒の席で話したりして、その中で「それありそ~」となった話が時間の中で継ぎ足されたのではないか、と。800年前の話に500年前の人が脚色したり、語り継がれる中でその時代の価値観に変化していくのは、共同作業のようなロマンを感じます。

次回は「今昔とんでも物語」㊳を、お送りします。恐怖の情報が多すぎて困惑する僧の話です。

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