今昔とんでも物語㊴「えり最強男」

いい気になった若様

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、不思議なお話です。

助かった遊び人

雑なストーリー①・昔、京に、大臣がいました。その大臣の息子である若君は、大変な女好きで、元服(大人になったと示す儀式)を先延ばしにして、かわい子ぶりっ子スタイルで、毎夜のように出歩き、遊びまわっておりました。ひと頃、若君が「いいね」と思う女子が、自分の屋敷から遠くに住んでいたので、よく通っていました。心配した両親が「危ないから夜間外出禁止だよ!」と言っても遊び心は止められません。ある夜、若君は、こっそり少ないお供を連れて屋敷を出ました。
雑なストーリー②・彼女の所に向かっていると、夜だとゆうのに、前の道から、大勢の人間がたいまつを手に騒ぎながら、やって来る気配がありました。若君は「うわー何事?盗賊?どうしよう⁈」と怯えていると、お供の男の子の使用人が「昼間見た時、戸が開いてる門が、この近くにあったから、そこに隠れてやり過ごしてみては?」と名案を出したので、他のお供も一緒に隠れました。
雑なストーリー③・いよいよ気配が前を通っているので、若君は、恐る恐る戸を少し開いて外を見ました。すると、通っているのは、様々な姿の鬼達、いわゆる一つの「百鬼夜行」の最中なのでした。若君は恐怖で仰天します。すると鬼の1人が「あれなんか、人間の匂いしない?捕まえてやろっ!」と言いだし、若君達の隠れている方に来たので「もう駄目や~」と怯えます。しかし何故か、鬼は人間達を捕まえることなく仲間の群れに戻って行きます。仲間が「あれ?人間は?」と聞くと、戻った鬼は「なんか無理」と、答えます。「無理なことあるかい」と他の鬼が行っても、結果は同じ事です。最終的にリーダー格の鬼が行って、戻ってきて言うには「すごく徳の高いお坊さんが居るから捕まえられない!」その言葉を発するとほぼ同時に、たいまつは消え、鬼どもは、あちこちに消え去りました。
雑なストーリー④・恐怖のまま若君とお供は逃げるように屋敷に帰りました。若君はぐったりして発熱しました。若君は横になりながら、家族や乳母に、夜道での出来事を話します。すると乳母が「実は私の兄弟の高僧に、尊い御仏の名前を書いて貰って、若君の服の襟に縫い込んでおいたのよ!それが無かったら今頃どうなっていたか!」と泣きます。それで鬼達は手出しができなかったのでしょう。両親が祈祷師を頼み、3,4日経つと、若君は回復に向かいました。後から調べたらその夜は、百鬼夜行が出る日でした。人々は霊験あらたかな仏の名前を書いた紙を、お守りとして身に着けるべきだ、と言い合ったそうです。

野式部の雑な感想

信心深い人の多かったこの時代、なんも考えず出歩くとは、若様は大物かも知れません。元服をしないでいたのも、どうゆうお気持ちからなのか、もしや「大人になんてなりたくない!」ピーターパン症候群でしょうか。でも両親の愛はもとより、乳母が心配して秘密裏に防災対策するなんて、愛されキャラで、根はいい子なのかも。何気に、お供の少年の賢さが気になりますが、やっぱり若君の人徳でしょうか。

次回は「今昔とんでも物語㊵」を、お送りします。琵琶と鬼のお話です。


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