今昔とんでも物語【97】浮気の濡れ衣


今回は嫉妬に関するお話です。平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」の中から、特に心に残る「とんでもない」話をご紹介していきます。
命が助かった僧(17巻40話より)
雑なストーリー①・昔、ある寺に法華経を熱心に信仰して努力し続ける人柄も良い立派な僧がいました。
一方、この国に大変猛々しい、他者を思いやる心のない殺生も平気な悪人の武士がおりましたが、この僧のお経を聞いて深く感銘を受け寺に通うようになります。そのうち家に僧を招いてまでお経を聞かせてもらうようになります。
雑なストーリー②・そんな武士には若くて美しいトロフィーワイフがおりました。ある日、武士の従者が「あの坊さんと奥方は浮気してますよっ」と事実無根のデマを告げ口しました。すると武士は特に確認もすることなく「くっそーあの僧を殺したる!」と激怒しました。
雑なストーリー③・武士は僧を従者に捕まえさせ、一緒に山奥まで行き木に縛り付けさせました。そして従者に「あの僧を矢で射て殺せ」と命令するのでした。僧は驚き恐れましたがやがて「自分は何も悪いことをしていないのだから何にも怖くないっ!」と法華経を唱え始めました。
雑なストーリー④・すると部下の中でも弓の名手が矢を射っても矢は刺さらず僧のそばに落ちました。武士は「部下が下手すぎるんじゃ…」と自分が弓を持ち僧に向かって矢を放ちましたが同じ様に矢は僧のそばに落ちました。
雑なストーリー⑤・武士は「これはただ事ではない…」と正気を取り戻しました。僧の縄を解き「ホントにごめんなさい…自分が間違っていました…」と謝りとぼとぼ従者と帰っていきました。
雑なストーリー⑥・その数日後の夜の事です。武士は白い像に乗った普賢菩薩の夢を見ました。その菩薩には何と三本の矢が刺さっていたのです。菩薩は言いました。「お前が無実の自分を殺そうとしたから僕は去りますよ」と。
それから武士があの僧を訪ねると荷物をまとめて去った後でした。武士は後悔して僧を探し続けましたが二度と会えませんでした。
「人を疑う時は噂話を鵜吞みにせずにきちんと確認してからね」と人々は話し合いました。
野式部の雑な感想
とても気になることがあります。まず、従者はなぜこんな嘘の話を主に告げたのでしょうか。そして武士もすっかり信じ込んだのでしょうか。自分なりに可能性を考えました。
①妻が好色で何度も浮気するタイプだった。
②僧が女好きするタイプだった。あるいは触れなば落ちん風情があった。
③告げ口従者は過去に妻と何かあった。あるいは振られて逆恨みしてた。
④本当に僧と妻は愛し合っていた。
それにしても双方どちらにも確認を取らずに確信するのは早合点にもほどがあります。そりゃあ聞いてもホントの事を言う訳がないですけれども。うかつなお話です。

次回は「今昔とんでも物語【98】」を、お送りします。おっかない生物が登場します。
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