今昔とんでも物語㉟「鬼の家に泊まる」

カトちゃんの名台詞

平安時代末期に編纂された説話集、「今昔物語」には、沢山のお話があります。かなり自由な、その中でも、特に心に残る「とんでもない」と思える話をご紹介していきたいと思います。今回は、なんとも残念なお話です。

恐怖の休憩処!共寝の代償は命!

雑なストーリー①・昔、京に大夫とゆう役職の男がいました。大夫は、高貴な方に仕えている侍女と恋仲になっていて、時々会っていました。ある日、久しぶりに会おうとして、いつも仲介をしてくれる、年配の女性に手配を頼みました。すると仲介の女性は少し困り顔です。「あの方を呼んでくるのは容易いのですが、いつもお2人で泊っている部屋が今日は先約があるのです」大夫は、自分がいい客じゃないから嘘をついて断ってるんじゃ…と疑いましたが、いつもの宿を見てみると、なるほど大勢の人が泊まっている気配があります。
雑なストーリー②・「せっかく来たのにどうしよう。もう気持ちは昂っている…」と大夫が困っていると、仲介の女性は、逆立ちしなくても、いい案が浮かんだようです。「ここから少し歩いた所に無人のお堂があるから、今夜はそこでお過ごしください」と言いました。大夫は「まぁいいか」と思い、そうする事に決めました。しばらくして、仲介の女性は、恋人の女性を呼んできました。

3人でお堂に歩きました。正直、古いし手入れも行き届いてないし、やな感じはしたのですが、仲介の女性が、持ってきた畳を敷いてくれたのでそこで休むことにしました。仲介の女性は「それじゃ私は明け方、お迎えに来ますので」と帰って行きました。
雑なストーリー③・そこからは2人きり、「ちょっと随分ご無沙汰じゃないの、他に良い人できたのかしら」「何言ってんだい、僕には君だけさぁ」とかなんとか愚にもつかない会話を交わしながら共寝しました。しかし夜中頃でしょうか、人の気配が近づいて、中に入ってきたのです。それは最初は、灯りを持った女の子、その後ろには主らしき女房装束の女がいました。その女は怒ったように言いました。

「ちょっと、ここの主は私なんだけど、何でアンタたち、勝手にくつろいじゃってるわけ?神聖な場所だっちゅーのにとんでもない事よ」何だか不気味な雰囲気のその女性に怒られ、大夫は言い訳しながらも平謝り、大慌てで逃げるように、恋人とお堂を出ました。
雑なストーリー④・しかし、恋人はまともに歩けない程、消耗しており、汗だくで、ただ事ではない様子です。何とか抱えて勤め先の屋敷へ送り届けました。
雑なストーリー⑤・大夫も恐怖と不調で翌日は寝込んでおりました。しかし恋人の様子が心配だったので、彼女の勤めている屋敷に出向きました。顔見知りの、恋人の同僚に話を聞きますと、なんと恋人はあれから、朦朧としたままで、親戚縁者もいない身の上なので、仮小屋のような所に寝かせられ、まもなく亡くなってしまったとの事でした。

男は大変驚きました。人に勧められたとはいえ、あんな不気味なお堂に行かなければ、彼女も死ななくて済んだのに…あのお堂は鬼の住処だったのでしょう。知らない所、しかもお堂になど泊まってはいけないと、人々は言い伝えました。

野式部の雑な感想

 なんとも怖い話です。現代に例えるなら、実家暮らしと寮暮らしの恋人同士が、泊まったラブホで怪奇事件が起きた、とゆう感じでしょうか。この仲介の女性がちょっと不思議ですが、恋仲の女を屋敷から呼んで、休憩所を提供して、手数料を貰って生活していたのでしょう。そうゆう男女が一定数いたから商売が成り立ったのでしょう。

 お堂に怖い女性が現れましたが、こちらの立場からすると、自分の家に帰ってきたら、見知らぬ人達がイチャコラしてるって有り得ない事なので、憤慨も仕方ないかと。

それにしても亡くなった女性が哀れです。当時は「死」に関するものは穢れとされ、遠ざけられていました。だから具合悪そうで危ない、となると職場の屋敷を追い出されてしまいます。帰る場所があればいいのですが、ないと道端に毛が生えたみたいな所で横になるしかない、ただでさえ不調なのに看病も受けられず、息絶えるしかない…酷いものです。

そしてこの話で思い浮かぶのは「源氏物語」の光源氏と夕顔、ではないでしょうか。光君は、恋人の夕顔の住む下町の雰囲気が嫌だったのか、気分変えたかったのか、夕顔を連れ出し、よくわかんない知り合いの別荘みたいな所に泊まります。すると女の霊が現れて「おめーアタシがこんなにアンタを慕ってんのに、こんな冴えない女に夢中になりおってからに!」と、夕顔を取り殺してしまうのでした。「方違え」とか「物忌み」とか色々気を配っていても、悪霊がちょいちょい出没する時代なのでした。

次回は「今昔とんでも物語」㊱を、お送りします。有名なプレイボーイの恋のお話に鬼が出てきます。


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